スマホ依存で学力低下の本質は? "利用時間が長い"ことばかり気にする人が陥る盲点とは
さらに総務省の調査では、日本人(16〜64歳)が1日にスマホやインターネットに接続している時間は平均3時間56分に達しています。睡眠時間を除けば、起きている時間のおよそ4分の1を画面の前で過ごしている計算です。スマホは生活の中心であり、子どもたちはその世界の中で成長しています。
こうした状況の中で、「スマホのせいで学力が下がっている」という言説はかなりよく聞かれるものとなっています。
が、しかし本当に、スマホ一つでそこまで大きな影響が出るものなのでしょうか?重要なのは、スマホという“道具”そのものではなく、スマホの設計が子どもたちから「考えるきっかけ」を奪っているのではないかという点です。今回は、子どもたちのスマホの使い方という点からこの問題を深掘りしていきたいと思います。
かつてあった“ボタン”がなくなった影響
突然ですが、みなさんが使っているスマートフォンには、「ホームボタン」はあるでしょうか?アプリなどを中断して、ホーム画面のところに戻ってくるためのボタン・「ホームボタン」です。おそらく、今を生きるみなさんのスマホには「ない」ということのほうが多いと思います。
かつては、アプリを閉じてホーム画面に戻る際には、必ず物理的なボタンを押す必要がありました。この行為は、たとえ無意識であっても「一旦区切る」「操作を終える」という意思の反映でした。ところが2017年のiPhone X以降、多くのスマホからホームボタンが廃止され、代わりに「スワイプ操作」が基本となりました。わずかに指を動かすだけで操作が切り替わり、流れるように次のページへ移っていきます。
この変化は、単なるデザインの刷新ではありません。物理的なボタンが存在すると、人は自然と“区切り”を意識します。けれどスワイプ操作ではその区切りが曖昧になり、YouTubeやSNSで動画を観ていても、「そろそろやめよう」と判断する瞬間がつかみにくくなります。
実際、学校で生徒のスマホ利用を見ていると、声をかけない限り延々と画面を眺め続ける様子が見られます。「時間だからスマホを閉じよう」と自発的に行動できず、外部からの“指示”によってようやく手放すという生徒が少なくありません。



















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