酒向:一方で、このくらいまではよくなるでしょうとお伝えして、リハビリを実践するケースももちろんあります。寝たきりから、自分で歩けるぐらいまで目に見えて回復する方もいれば、少しずつスモールステップで進む方もいます。
寝たきりなのは変わらないけれど、少し目が開いて、話しかければ反応が生まれる。イエスかノー程度の簡単な意思の疎通が可能になり、笑顔も見られるようになるのです。口からものを食べられるようになり、車椅子のリクライニングが90度近くまで起こせるようになる。「全介助のままなら、結局は自分で何もできない。そんなものは回復ではない」とクールなことを言う先生もいますが、ご家族にとってはこの小さな変化も大きな奇跡です。意思の疎通ができるだけでも、すごく喜ばれるんです。
患者さん自身の反応がない状態のときは、脳画像から見てどこまでよくなる可能性があるかをご家族にお話しします。希望があれば重症でもあきらめず、攻めのリハビリ治療でチャレンジしています。
泥臭い作業の繰り返しこそが超回復につながる
窪田:新しい人生の再出発をサポートするというお話がありましたが、さまざまな形での再出発があるのですね。あきらめる力もあきらめない力も、どちらもその先の人生の希望になってくれるといいなと思います。寝たきりの方でも、必ずしもあきらめる必要はないというのはすごいですね。
酒向:85歳の方が風邪をこじらせて、肺炎になってしまったとき、1カ月寝込んでいたら自力で動けなくなり、寝返りもできなくなってしまったことがありました。意識もぼんやりしてしまい、声をかけても反応がなくなってしまったのです。しかしこういう方の場合、脳の画像を撮るとそこには変化がないわけです。それならば、今は寝たきりでも元に戻る可能性が十分にある。
脳に問題がない、あるいは問題が少ない寝たきりの方を立たせると、患者さんの脳がびっくりするんですよね。患者さん自身も急に立たされて、重力にびっくりしていると思うんですけど(笑)。閉じられていた目が開くし、何だか声が出そうになるし、人によってはしっかりと「やめろ」と言うこともあります。ただ、数分間で起立性低血圧になってしまうので、また横にしてあげなければなりません。血圧が戻ったところでまた立たせて、低血圧になったら横にする。これを2週間ぐらい毎日何度も繰り返すと、血圧が下がらなくなり、意識もどんどんしっかりしてきて、筋力も上がってくるんです。非常に泥臭くて地道な作業の反復なのですが、重症例でも起立性低血圧が改善して、そこからいろいろな回復が起こってくるということです。

















