名門小学校に受かる子はどこで「本物の情報」を得ているのか––ハイソだけが使う《看板のない予備校》と階層の深い闇

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商売のコツは、お客様にリピートしてもらい、長く愛顧いただくことだーーと多くの人が信じて疑わない。この実にシンプルな法則を如実に体現しているのは、商品やサービスのみならず、ある業界全体だったりする。

人生の「成功」について誰も語ってこなかったこと 仕事にすべてを奪われないために知っておきたい能力主義という社会の仕組み
『人生の「成功」について誰も語ってこなかったこと 仕事にすべてを奪われないために知っておきたい能力主義という社会の仕組み』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

その一つが、コンサル業界である。

コンサル業界は、一発で顧客が「よしわかった! わが社の成功が完璧に描けました!」となってもらっては困る。相談=コンサルティングが必要なのは、困っているとき、うまくいっていないときだ。ここまで言えば、皆まで言わなくてもよいだろう。

解けない問いを残してやっていく。そう簡単に解決しないので、ここからはまたある種の課金ゲーム化する。もっとプロジェクト規模を大きくすれば、進捗があるかもしれない……あと○億円です、と。我々が作った人事制度に問題はないが、御社内の運用に難あり。運用のてこ入れをするならあと○億円です、と。

「こんまり」のクライアントはリピート不要

他方で、興味深いこんな話もある。片づけで一躍有名になったこんまりこと、近藤麻理恵氏のモットーだ。

こんまりメソッドこと、片づけの技術は、整理整頓・掃除テクニックに到底限らない。何に自分はときめくのか。何は自分のなかで過去のこととして終わらせるべきか。これは

「心を整える」

ことに直結する営為とされている。彼女はインタビューにこう答えている。

"「こんまりメソッド」の片づけは、自分としっかり向き合うことから始まる。「いまの自分が持っているものと向き合うことは、自分と向き合うこと。いま、何にときめくのかをひとつひとつ確認しながら判断する作業を繰り返すことで、判断力や決断力が高まり、自己理解が進みます」"

はい、こんまりは単なるお片づけ屋さんではなく、「心の掃除」を司る女神なのだ。つまり、自己啓発の一つの総本山であり、成功哲学の一種なのだ。

だが、近藤さんというのは本当に聡明な女性なのだと気づかされる。なぜなら、だらだら契約を続けない。彼女はきっぱりとこう言う。

"片づけは一回で終わります。
私がお伝えしたいのは、
一生に一度の「祭りの片づけ」を
一日でも早く終わらせてほしいということです。
(『人生がときめく片づけの魔法』より抜粋)"

痺れる。これはご本人が2019年にオフィシャルFacebookアカウントから発信された内容だ。コンプレックス産業が、いわば「リバウンド」によってうまくいかない状態を維持継続させながら、商売を繫盛させることが少なくないのに対して、こんまりは、リバウンドしないから、自分のクライアントはリピート不要、一度私にかかればいいと明言するのだ。

これは……片づけコンサルタントではなく組織開発コンサルタントとしても耳が痛い。一難去ってまた一難的な感じで、クライアントに長らく「伴走」なんて呼んでいる自分が少々恥ずかしくなった。が、卒業させない仕組み、というのは、多くの産業振興に欠かせない点は、ぜひ覚えておきたい。

勅使川原 真衣 組織開発コンサルタント

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てしがわらまい / Mai Teshigawara

1982年横浜生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。BCG、ヘイ グループなど外資コンサルティングファーム勤務を経て独立。2017 年に組織開発を専門とする、おのみず株式会社を設立し、組織開発を支援する。二児の母。2020年から乳ガン闘病中。著書に『「能力」の生きづらさをほぐす』

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