なぜ「アルピーヌ」ブランドは愛されるのか?「A110」に宿る最終限定車3モデルで再確認したブランドの作り方

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あらゆる部分がレーシングカーに近い手応えで、やっぱりサーキットが似合いそうだが、サイズとパワーが適度なので手に余る感じではなく、公道でもしっかり楽しめる。そういう意味で貴重な存在だと思った。

そこからベースモデルに乗り換えると、別物のようにしっとりしなやかな乗り味に驚く。これなら普段使いできると即座に感じる。

クラシックな世界観を残すベースモデル(筆者撮影)

コーナリングも、R70のような瞬間的な反応ではなく、大きな曲線を描くように挙動が推移していく。エンジンサウンドも昔のA110を思わせる、ちょっと懐かしい響きで、R70とは違った意味でその気にさせる。

筆者は長年フランス車を乗り継いできたので、こういうテイストは大好物なのだが、多くの人が想像するスポーツカーのそれとは違うことも事実。エクステリアやインテリアもまた、クラシックA110とのつながりを色濃く感じさせる。

ベースモデルのインテリア(筆者撮影)

筆者が知るクラシックA110のオーナーの中には、現行A110を買った人もいるが、多くはベースモデルやその前身であるピュアを選び、例外なく満足している。それだけクラシックA110の世界観を忠実に再現できているのだろう。

逆に今のスポーツカーとしてA110に接するなら、GTSは適役かもしれない。乗り心地はベースモデルより硬いけれど、R70のようなソリッド感ではない。リクライニング可能なシートが厚めなので、ショックをやわらげてくれることもあるだろう。

「GTS」にはセミバケットシートを装備(筆者撮影)

独特のグラフィックが施されたレザーを含めて、シックでありながらドレッシーな仕立ては、いまや1000万円を超える価格を納得させる要素のひとつになりそうだ。

ブランドイメージの育て方

ひさしぶりにA110に乗って感じたのは、スーパーカー的なスポーツカーが多くなってきた今だからこそ、このサイズとパワーで出したことの素晴らしさ。

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新生アルピーヌが高い評価を受けた最大の理由は、復活に向けたプロセスからクルマづくりに至るまで、ブランドイメージにブレがなかったことだ。この精神がA290やA390にどのように受け継がれているのか、興味が湧いてきた。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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