「残りはこいつに聞いて」 《自分そっくりアンドロイド》で脚光の阪大教授、取材時間オーバーで退室→ロボットに対応引き継ぎで見た"驚愕の光景"

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――アンドロイドにおいて、そのタイミングはいつ頃だと。

石黒:まだ時期を待っている段階ですが、もうじき世の中に出ていきます。アバターはコロナ禍がきて、リモートワークが当たり前になったことで、「今しかない」と思いました。だから2021年にAVITAを起ち上げたんです。

その少し前、2018年に「2050年までに身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現することを目指す」ムーンショット型研究開発制度が政府主導ではじまり、アバターやロボットの活用が国を挙げて推進され始めたことも追い風でした。……ね? 物事にはタイミングがあるんですよ。

――アンドロイドの社会実装のためには、価格も重要ですよね。石黒さんが過去に開発された、マツコ・デラックスそっくりの「マツコロイド」は、高級外車くらいの価格だとか。

石黒:同じ型のアンドロイドを10万台量産すれば、1台100万円以下も見えてきますよ。問題はそれをなんに使うかです。工場で働くのか、家で部屋の片付けをしてもらうのか。その用途に合った言動をきちんとできるようにしたうえで、少なくとも100万円くらいで売らないと競争に勝てません。お掃除ロボット『ルンバ』も安価な中国製に押されています。これと同様に、アンドロイドも中国では80万円くらいのものが売り出されています。

――安くする代わりに機能を落としているのでしょうか。

石黒:いやいや、よく動きますよ。だから勝てない。勝つためには、圧倒的に安くしないとダメなんです。今はその方法を模索しています。

「たんぱく質の身体」を捨てて、生き続ける未来へ

――アンドロイド研究のゴールはどこにあると思われますか。

石黒:アンドロイドに命を引き継いで生き続ける未来です。ガンになったり、放射能を浴びたら病気になる、われわれの「たんぱく質の身体」は早く捨てたほうがいい。100年という寿命が短すぎるんですよ。それでは隣の惑星にさえ行けないじゃないですか。今のままでは、地球が滅びるときに全員滅びてしまいます。そのとき生き残ったものを新たに「人間」と呼ぶんです。

――生き残れる身体に進化させようとしている。

石黒:だからみんなロボットが好きなんじゃないですか。大阪・関西万博でも、日本人がモノにいのちを宿してきた歴史、人間がアンドロイドと共存する50年後の未来、人間が身体を自由に選べる1000年後と、3つのゾーンが体験できるパビリオンをプロデュースしました。

目的は、未来について考えてもらうことです。未来は一人ひとりが責任持ってつくっていくものですから。それが万博であり、あのパビリオンの価値だったと思います。

石黒教授
忙しい研究の合間を縫って、大阪万博パビリオンのプロデュースもやり遂げた(撮影:ワダハルキ)
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