「残りはこいつに聞いて」 《自分そっくりアンドロイド》で脚光の阪大教授、取材時間オーバーで退室→ロボットに対応引き継ぎで見た"驚愕の光景"
――では、「人間とは?」という問いへの答えはいかがですか。
石黒:人間は動物ですが、大きく他の動物と異なる点があります。科学技術によって、能力を拡張しているところです。たとえば自然の驚異に負けない家や、疫病に負けない身体を手に入れています。
つまり、科学技術が進化の手段となっていると言える。「科学技術を使って進化してきた動物」と定義することができるのではないでしょうか。
アンドロイドは社会のなかで改良していくもの
――AIやロボットがものすごいスピードで進歩する時代に、日本で働く私たちは、どんなビジョンを持って生きたらよいと思われますか。
石黒:人間とロボットは当然、共生していくものだと考えるべきです。実際、最近のAIや情報システム系の研究は、社会に非常に根づいていますよね。
――石黒さんも大学で研究をされる一方、仮想空間のキャラクター「アバター」や生成AIを活用したサービスを開発するAVITA株式会社を経営されていますね。
石黒:情報システム系の研究は、大学に閉じるものではありません。アメリカなんて、誰も大学にいませんよ。アバターやアンドロイドを賢くしようと思ったら、自分たちで売って、運用して、データを取らないと賢くなりませんから。
――実際に使ってみないと何が課題なのかわからないから、ですか。
石黒:ええ。人と関わるアバターやロボットをつくろうと思ったら、社会のなかで試さないと進歩させていけません。自動運転車の研究をみてください。リアルな車道を走っているから、どんどん新しいデータが取り込まれ、改良が重ねられているわけです。
――AVITAのホームページの導入事例を見ると、銀行や通信キャリアなど、名だたる企業がアバターサービス『AVACOM』を接客や窓口に導入していますね。すでに、労働力不足の日本における重要なソリューションになっている印象を受けました。
石黒:早晩、アンドロイドもそうなると思います。ただ、社会のなかで受け入れられるかどうかにはタイミングがあります。インターネットもそうですよね。1960年代後半からパソコンはありましたが、マイクロソフトやアップルコンピュータが1970年代、絶妙なタイミングで売り出して世界に広がりました。
2007年に発売されたiPhoneもそうで、シャープは1993年に電子手帳『ザウルス』を作っていた。重なる機能の多い後発ですが、世に出すタイミングが絶妙でした。



















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