AI利用を全従業員に「ほぼ義務化」 平成を彩ったSNS《mixi》、その運営会社が進める"AI改革"とは

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「代表的なKPIとしては、時間削減と売り上げ・利益貢献、そして外注費削減を追いかけました。たとえば『3時間かかっていた作業が1分になった』という話は珍しくありません。重要なのは、年間で何回その作業があり、合計何時間削減できたかまで数字に落とし込むことでした」(村瀬氏)

コンサルティングなど外部に依頼していた業務を、AIを活用して内製に切り替えた例も多いという。

「自社で検証し実装できるようになった結果、外注費が丸々なくなった案件もありました。決算でも『今期10億円単位の創出見込み』として開示しているレベルで効果が出ています」(村瀬氏)

バックオフィス業務では、80〜90%の時間削減が出た事例も少なくなかった。コード生成ツールを活用したエンジニアリング領域でも、開発スピードが向上しつつ事故件数をモニタリングするなど、「速さ」と「安全性」の両立を図り、効果を発揮している。

クリエイティブ領域でも変化は大きい。権利リスクに配慮しながら、まずはイメージや方向性の共有に画像生成AIを使い、Adobe Fireflyのように学習データの権利が解決されたツールでは、広告やSNS画像のたたき台生成にも活用している。

「生成した画像をそのまま使うことはほぼありません。職人であるクリエイターが、どうしても手を入れたくなります。しかし、これまで8時間かけていた作業が1時間で済めば、残り7時間を『こだわりたい部分』に集中できるわけです。プロがプロらしくいられるためのアシストとして、クリエイティブ分野でのAI活用を位置づけています」(村瀬氏)

アンバサダー制度と「AI前提」のワークフロー設計

MIXIが「カルチャーづくり」で工夫したのが、現場にAI推進のハブとなる「アンバサダー」を置いたことだ。

「室長クラスがリーダーシップを取るのはもちろんだが、それだけでは足りません。現場でAIに敏感な人をアンバサダーに任命し、委員会に参加してもらいました。アンバサダーが部署内でハンズオンをしながら、『まだ使っていない人』を一緒に巻き込んでいきました」(村瀬氏)

もう1つのポイントは、「AI利用をほぼ義務」に近づける設計にあった。

「7月のテーマは『AIを前提にしたワークフローを考える』でした。たとえば、ある見積もりに3時間かかっていたものが、AIでは1分で終わるとわかったら、次に同じ仕事が来たときの見積もりは1分になるはずだ、という前提で考えるのです」(村瀬氏)

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