AI利用を全従業員に「ほぼ義務化」 平成を彩ったSNS《mixi》、その運営会社が進める"AI改革"とは
最初に着手したのは、「ツールの使い方研修」ではなく、「リーダーシップ研修としてのAI」であった。Googleと共同で、室長クラスなどリーダー層を対象に2日間の集中プログラムを設計した。
冒頭の数時間だけは実際にいくつかのモデルを触り、「同じプロンプトでどう答えが変わるか」「プロンプトを少し変えると何が起きるか」といった基本体験を行った。
研修のメインはその先にあった。
「我々がなぜAIに投資するのか、会社をどう変革し、どんな可能性があるのか――経営陣とリーダーがとことん対話しました。そのうえで、各リーダーに『自分の部署でAIをどう使うか』を宣言してもらい、互いに質問し合う場にしたのです」(村瀬氏)
「なぜ今までやらなかったのか」「なぜ導入が遅れたのか」といったネガティブな問いも含め、向き合うことを求めた結果、リーダー層に共通の危機感とストーリーが生まれた。
この研修を経て、2025年4月からは全社横断のAI委員会をスタートさせた。ここから「3カ月で全社導入」というラストスパートが始まった。
倫理・セキュリティ体制を先につくる
AI浸透の大きなボトルネックが、情報セキュリティと権利リスクへの不安だ。
生成AIを活用したいと思う一方で、セキュリティや権利のリスク、コンプライアンスに照らして、どこまで許されるのか、という点が明確ではなかった。これもまた、生成AIの利用をためらうには十分な要素となっていた。
MIXIは正面から手を打った。まず、他社の機密情報やコラボレーション先の情報、同意のない個人情報など、法令に抵触する可能性のあるデータは入力禁止と明確に定義した。
一方で、自社内に閉じた情報、たとえば予算や計画、ソースコードなどは「特定のAI環境であれば入力してよい」とうたった。そのための判断を行う場として、法務・知財・情報セキュリティ・テクノロジーの責任者によるガバナンスチームを組成し、「AI相談窓口」を整備した。
これにより、“入れてはいけない情報”だけでなく、“入れてもよい情報”も明確・明快に言える土台を整え、現場の不安を解消した。
2025年4月から6月までは、「全社AI浸透のための3カ月」としてテーマを月ごとに区切った。
4月は「徹底的に触って導入する」フェーズ。
5月には「『触ってみる』から卒業し、本番業務で使う」ことを求めた。
6月には「AI前提でワークフローを組み直す」段階に入った。
7月にはその成果を出すことを約束させた。
その結果、全社の利用率は約99%に達したという。



















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