狙うは"浦和レッズ超え"のビッグクラブ、RB大宮「挑戦者に翼をさずける」戦略がJリーグの未来を変える日

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トップチームへの投資にも熱心で、試合時の映像を瞬時にロッカールームの大型スクリーンで見て、フィードバックできるようなIT技術を今季途中から導入。そのためのスペシャリストも採用した。これによって選手たちの戦術理解のスピードが高まり、修正も迅速に行われるようになった。他クラブもうらやむような環境を今のRB大宮の選手たちは得られている。

「レッドブルは『挑戦する人に翼をさずける会社』。可能性を信じて投資する企業です。その哲学の下で、抱えているアスリートはたくさんいます。スキージャンプの小林陵侑、F1の角田裕毅らがそうですけど、彼らがメダルを取れるからサポートしているのではなく、才能を信じて羽ばたかせたいという意思を持って取り組んでいると聞いています。だから『まずチャレンジしてみよう』という信念にはブレがない」(原社長)

浦和以上のポテンシャルを秘める大宮という立地

埼玉県は22年3月に「大宮スーパー・ボールパーク構想」を公表。NACK5スタジアム大宮に関しては、Jリーグスタジアム基準、アジアチャンピオンズリーグ開催基準を満たしていない部分があるため、施設管理者であるさいたま市がRB大宮などと連携して、整備の方向性を検討していくことになっている。地域が一体となって「大宮という街をよくしたい」という熱気が高まっているのは、ポジティブな要素だ。

「埼玉県の大野元裕知事、さいたま市の清水勇人市長も、今まで以上にサッカーに興味を持ってくれていて、9月には大野知事がライプツィヒを訪問。クラブ関係者と意見交換をする機会を持っていただきました。議員の方も何人か同行してくださって、理解を深めていただいたのは、われわれにとっても朗報です」(原社長)

10月には、大宮をハブとして東北新幹線でつながっている北関東や東北、北陸などの自治体、観光局などの関係者が集まるパーティーがあり、そこに原社長も参加。ネットワーク拡大に尽力したという。

大宮という「土地」に大きなポテンシャルがあるのは確か。そのあたりは同じ埼玉県内のライバル・浦和よりアドバンテージがあるのかもしれない。

原社長自身もかつて三菱重工業で現役時代を過ごし、後身の浦和レッズでは監督も務めた経験があり、両者の関係性を熟知している。お互いに切磋琢磨して埼玉県を盛り上げられれば一番いいと考えているはずだ。

「かつての三菱重工もそうですけど、僕らが現役だった頃は重厚長大型産業がサッカークラブ運営のメインでした。それが自動車メーカーになり、IT系へと移行していった。さらに外資の参入も始まりました。やはり今後のサッカー界、スポーツ界はワールドワイドにならないといけない。世界に通じるクラブが出てくることが大事だと思いますし、僕らには大きな責任がある」

原社長も自覚しているように、RB大宮はその筆頭格。だからこそ、周囲からも大いに注目される。目の前のJ1昇格争いの行方も気になるが、それ以上に重要なのは、クラブとしてどのような道をたどっていくか。RB大宮の動向がJリーグの今後を左右するかもしれない。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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