「幸せ」って、いったい何? 「嬉しい」とは別? フランス人留学生との《本質観取》のなかで見えてきた"深すぎる答え"とは

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Aさん:その意味では、日本語の「幸せ」もそうじゃないですか? お金持ちは幸せであるとは必ずしも言えない気がします。フランス語のBonheurと同じで、長い時間の中で、自分がどう感じているかというのが「幸せ」の本質にはあると思います。

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岩内:確かに。フランス語のContenteや日本語の「嬉しい」や「満足」は、どちらかと言えば瞬間的な感情や状態という感じがするね。 それに対して……。

Bさん:Bonheurは、未来も含めてもっと長い時間の中に浸っている感じですね。

Aさん:うん、その感じ。浸っているというのは言えてると思います。

岩内:日本語では、風呂上がりのビールも「幸せ」っていうから、フランス語のHeureuxやBonheurよりは短いスパンでも使える言葉かも。でも、瞬間的な「嬉しい」や「満足」よりは、やっぱりゆったりと浸ってる感じ、味わってる感じはあるね。おいしいビールを飲める時間に喜びを感じているというか。

辿り着いた「ボヌール」の本質とは

稲垣:いいですね。だんだんと言葉にできそうな気がしてきました。今回は、日本語の「幸せ」よりフランス語のBonheurの本質観取になりましたが、 ボヌールの本質、言葉にできそうですか?

Aさん:「生きることに大きな目標をもったり、それに到達するために努力したりする。現在から未来にまたがる時間全体を肯定し、それに浸っている気持ち」とかはどうですか?

Bさん:うん、しっくりきます。

稲垣:フランス語の「ボヌール」は、日本語の「幸せ」より、きめが細かいというか、もう少し限定的な使い方をする言葉だというのが見えましたね。今回の本質観取を踏まえて、次回は改めて日本語の「幸せ」の本質に迫っていきましょう。

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苫野 一徳 熊本大学大学院准教授/哲学者・教育学者

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とまの いっとく / Ittoku Tomano

1980年生まれ。熊本大学大学院教育学研究科准教授。博士(教育学)。早稲田大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程修了。専攻は哲学・教育学。経済産業省「産業構造審議会」委員、熊本市教育委員のほか、全国の多くの自治体・学校等のアドバイザーを歴任。著書に『学問としての教育学』(日本評論社)、『「自由」はいかに可能か』(NHK出版)、『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『勉強するのは何のため?』(日本評論社)、『はじめての哲学的思考』(ちくまプリマ―新書)、『「学校」をつくり直す』(河出新書)、『教育の力』(講談社現代新書)、『子どもの頃から哲学者』(大和書房)など多数。
※写真:©eri yamada

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岩内 章太郎 豊橋技術科学大学准教授

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いわうち・しょうたろう / Shotaro Iwauchi

豊橋技術科学大学准教授。著書に『新しい哲学の教科書 現代実在論入門』『〈私〉を取り戻す哲学』(ともに講談社)など。

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稲垣 みどり 順天堂大学国際教養学部准教授

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いながき・みどり / Midori Inagaki

順天堂大学国際教養学部准教授。著書に『共生社会のためのことばの教育 自由・幸福・対話・市民性』(共編著、明石書店)など。

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