「幸せ」って、いったい何? 「嬉しい」とは別? フランス人留学生との《本質観取》のなかで見えてきた"深すぎる答え"とは

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稲垣:ボヌールね。じゃあ、おいしいものを食べた時にボヌールって言いますか?

→本書のなかで「類似概念と比較する」というコツを述べましたが、日本語と外国語の比較もまた、本質観取したい言葉の本質をいっそう明らかにするよい方法です。 外国語教育の現場で本質観取を行うことの、1つの醍醐味と言えるでしょう。

「幸せ」「嬉しい」を表すさまざまな単語

Aさん:いえ、それはないですね。おいしいものを食べたりおいしいビールを飲んだりした時は、Bonheurとはちょっと違います。むしろ Contente(コンタント)ですね。日本語だと「嬉しい」や「満足」かな。たとえば、明日の火曜日は休講なんですが、明日は休講で嬉しいの場合に使うのはContenteですね(笑)。

岩内:なるほど。確かに、日本語でも「幸せ」と「嬉しい」はちょっと違いますね。その違いの本質がつかめたら、「幸せ」の本質が際立ってきそうです。

→ここでも「類似概念との比較」に目を向けています。

Aさん:そう言えば、似たような言葉にHeureux(ウルー)という言葉もあります。これもよく「幸せ」と訳されますね。

稲垣:なるほど。Bonheur Contente Heureux類似概念が3つ出てきましたね。Heureuxはどういう時に使う言葉なんですか?

Bさん:Heureuxは、たとえば大学を卒業する時とか、明日家族と会える、といった場合に使いますね。

岩内:やっぱり「嬉しい」に近いのかな。

Aさん:そうですね。 でも単にその状態に満足しているContenteとは違って、日本語「幸せ」に近い意味も持っていると思います。その喜びが続いていく感じでしょうか。

稲垣:じゃあBonheurはどういう場合に使うんですか?

Aさん:未来を思い描く時とか、将来の夢を話す時とかによく使いますね。

稲垣:Aさんの将来の夢は?

Aさん:教師になることです。

稲垣:ということは、Aさんは、教師になるとBonheurを感じられる、ということなんですね。

Aさん:それだけじゃなく、その夢に向かって努力していることにも、Bonheurを感じますね。

稲垣:なるほど。Bさんはどうですか?

Bさん:私も、将来好きな人と一緒になるとか、家族を作るとか、そういうことがBonheurでしょうか。

岩内:なるほど。Bonheurは、未来に向かう時間的な契機が入った「幸せ」なんですね。未来への感覚がある。明らかに、Contenteとは別格な感じがしますね。もうちょっと聞いてみたいんですが、たとえばお金があればBonheurを感じられそうですか?

Aさん:そうとも限りません。たとえば、フランスにはこういうことわざがあります。「L'argent ne fait pas le bonheur(お金は幸せをもたらさない)」。Bonheurは、お金があるとかいう「一時的な状態」の満足じゃないんです。もっと、自分の気持ちというか。

稲垣:なるほど、お金があるのは「状態」だけど、そんな状態にあるからといって、気持ちが幸せとは限らないですもんね。

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