弥「無職のこどおじはおまえも一緒だろう!」
万「わたくしは一味違うこどおじです」
弥「こどおじに一味違うも何もねぇんだよ!」
浩一はこどおじ二人の喧嘩にドン引きしつつも、どうにかチャット欄に文字を打ち込む。
42「二人とも落ち着いてください。不毛な言い合いをしていても仕方ありません。今回の案件は、万次郎さんは否決、弥太郎君は可決になりますが、その場合は同盟的にどのように判断されるのでしょう?」
万「基本的には多数決で過半数を満たしたら可決になりますが、過半数に満たなくても、誰かがどうしてもやりたいって言えば執行されることもありますね。今回の件はどうしましょうかね。ちょっと首領に訊いてくるんで、少々お待ちください」
待つこと十分、万次郎と一緒に、新しい人物が入室してきた。ユーザーネームの欄には“首領”と記されている。
三人の審議に従う“首領”
首「ごきげんよう、諸君、わたしが子供部屋同盟の首領である。身長は百八十センチ、体重は七十八キロ、体脂肪率は八パーセント、今日は上腕二頭筋のビルドアップに励む予定である。筋肉はペンより強し。それはさておき今回の案件であるが、本好きの首領としても見過ごすことはできん。しかし万次郎の言い分も理解できる。
ゆえに万次郎、弥太郎、42番、この三名で充分に審議して決めてくれたまえ。わたしはその結果に従おう。おっと、そろそろプレワークアウトのプロテインを摂取する時間だ。それでは諸君、また会おう!」
浩一はぽかんと口を開けてチャット画面を見つめていた。今のが子供部屋同盟の首領ということだろうか……。
万「じゃ、我々、三人で審議しましょう。前述の通り、わたくしとしては成敗しなくていいと思いますけどね。そもそものところ、書店で本を買うことになんのメリットがあるんですかね?」
弥「決まってるだろう、ネットじゃ目的の本を買っておしまいだ。でも書店ならば新しい本との思いがけない出会いがある」
万「それってよく聞くんですけど、ネットでもあなたにオススメの本って形で関連書籍が表示されますよね」
42「万次郎さんは、書店を利用したことないんですか?」
万「もちろんありますよ」
42「好きな本はなんですか?」
万「決まってるじゃないですか。“美味しんぼ”です」
美味しんぼ……、と浩一は思わず呟いたが、気を持ち直して次の文を打ち込む。
42「万次郎さんは、美味しんぼを本屋で買ったんですよね? それはいつの話で、どんな本屋だったんですか? 詳しく話してもらえますか?」


















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