データ保護と安全性確保は確かに死活問題だが、保管場所とはほとんど関係がない。最近でも中国を拠点とする攻撃者が米連邦人事管理局に不正侵入し、連邦職員の機密情報を含む2200万人分近くのファイルを盗み出した。中国やロシアのハッカーは欧米の強固な産業ネットワークや政府ネットワークに頻繁に侵入している。世界中の情報を運ぶ海底ケーブルを盗聴している国もある。
プライバシー問題はデータのローカライゼーションではなく、適切な暗号化でしか解決できない。デジタル世界のセキュリティは地理ではなく、技術に基づいているのだ。
グローバルなバリューチェーンの急速な発達で、経済は政治的境界を越えた自由なデータ流通にますます依存するようになっている。たとえば仮想通貨の取引データベースのような新技術の出現で、データ・ローカライゼーションの概念は、よりいっそう見当違いとなっている。
経済協力開発機構(OECD)がつい最近発表した報告書は「グローバルなデータエコシステムの『開放性』を促進する必要性、ひいては国、部門、組織を越えるデータの自由な流れ」の重要性を強調している。
こうした原則は、12カ国間で妥結したばかりの環太平洋経済連携協定(TPP)に盛り込まれている。世界の残りの国々も後に続くべきだ。
インターネットの開放性を死守せよ
デジタル面でのガバナンスをめぐる世界的な課題はとてつもなく巨大だ。しかし、いかなる領域においても、サイバー犯罪とテロに対処する取り組みが、インターネットの基盤である開放性を損なってはならない。
中国は選択を迫られるだろう。現在中国は自国と中央アジアと欧州の経済を結びつける「一帯一路」構想を提唱している。だが中国の世界的な将来は他国と同様、「一つのネット」に左右されるだろう。それは開放性があり、自由でダイナミックで強固なインターネットだ。
EUもデジタルの実情を正確に理解すべきであり、有害な保護主義を引き起こしてはならない。米国も、もはや唯一のサイバー大国ではないと認めた上で、国際的に認められた規範に従った行動を受け入れる必要がある。
インターネットはすでに世界で最も重要なインフラとなっている。だがこれは始まりにすぎない。このチャンスに満ちた新しい世界には、混乱と無秩序と衝突から生じた政策はふさわしくない。
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