「おっさん、痴漢したよね」無実の男性を痴漢冤罪で陥れた22歳女性が背負わされた"前科" 『子供部屋同盟』3章③

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芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第3章を4日に分けて毎日お届けします(今回は3日目)。

直人が「あの女」に求めるもの

その晩、直人は池袋のラブホテル“ラプソディ”六階の603号室の洗面所に立っていた。

子供部屋同盟
『子供部屋同盟』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

事前に通販で、ウィッグと付け髭と伊達眼鏡を購入してある。そのすべてを身に着けて、鏡の前に立つ。鏡には、普段の自分とは似ても似つかぬ見知らぬ男が立っている。

時計を見ると、午後九時前──、すでに池袋ミルクセーキには電話をしてある。

──ユリナちゃんを六十分コースでお願いします。

直人が最も欲しいのは、金ではない。加藤清美の謝罪だ。ラブホテルの個室で二人きりの状況で正体を明かし、奴を強請るのだ。裁判では負けたが、私と清美だけが知っている真実がある。その真実が、若林が言うところの清美の弱みだ。

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