「アハハ、アハハ。このおっさんマジでびびってんのな。小鹿みたいにぶるぶる震えちゃってさ。こんな情けないおっさん久しぶりに見たわ。これに懲りてさ、もう本番強要とかすんなよ」
清美は煙草を灰皿に押しつけると、ベッドから立ち上がり部屋から出ていった。従業員の男はしゃがみ込んで、直人の背中をぽんぽんと叩く。
「今回は勘弁してやるけどさ、うちの系列店は出禁にするから。社会人ならさ、ルールを守って、楽しく遊ばないとだめだよ、お客さん」
直人が最後に想起したのは
二人が部屋を出ていったのちも、直人は床に蹲(うずくま)ったまま、もう動けなかった。丸めた背中を震わせて、ただただ嗚咽をもらしていた。
両手で顔面を拭い、おもむろに立ち上がると、ベッド脇の大きな窓へと向かった。あの窓の向こう側へいけば私は解放される──、衝動的に考えてしまう。
仮にそれを実行したとしても、この界隈ではよくある話として片づけられるだろう。「風俗店でトラブルか。ラブホテルの六階から飛び降り、無職の男性(39)死亡」そんななんの価値もない記事が数日流れて消えるだろう。
両開きの窓を開けると、目の前に池袋の夜景が広がった。ネオンやサーチライトは涙で滲み、池袋は蛍光色の8ビットの街に見える。
二月の冷たい夜風を頬に受けながら、直人が最後に想起したのは、あのレトロゲームのような作りの奇妙なサイトだった。
*
──おめでとうございます。L40番さんの動機は、我々、子供部屋同盟に認められました。
──加藤清美、まったくとんでもない女ですね。特に池袋のラブホテルのくだりは、通信部のわたくしですら図らずも殺意を抱いてしまいました。こんな腐れ外道を生かしておく道理はありません。


















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