直人は電話をかけようとしている従業員の腕にしがみつく。
「すみません、私が悪かったです。罰金は払います。どうか警察だけは勘弁してもらえませんか……」
男は蔑むような瞳でこちらを見る。
「どのお客さんも、決まり文句みたいにそう言うんだよね。あんた会社員? 家族もいるの? 警察沙汰になったら、ぜんぶめちゃくちゃになるからね」
「どうか勘弁してください……」
「俺じゃなくて、謝るべき人物がいるでしょ。女の子は傷ついてるんですよ?」
清美はベッドに腰かけて足を組み、不味そうに煙草を吸っている。
屈辱の謝罪
私が謝る? 私の人生をめちゃくちゃにした女に、私が謝る──?
「ど、ど、ど、どうも、すみませんでした」
直人は清美のほうを向いて、上ずった声でかろうじてそう口にした。
清美は頬をすぼめて煙草の煙を吐く。
「おっさん、謝るときは頭下げるもんだろ。土下座して謝んなよ」
直人は両膝を折り曲げて、額を床につけた。手や膝下は細かく震え、全身から熱いような冷たいような汗が止めどなく溢れてくる。
「どうもすみませんでした」
カシャ、カシャ、とシャッター音が頭上から聞こえて顔を上げると、清美は薄い唇の口角を持ち上げて、ニヤニヤしながらスマホで写真を撮っていた。


















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