直人は敢えて強気の姿勢で応じる。すると男は頭を掻きながら言う。
「お客さん、反省してます? 罰金はともかく、まず最初にすることがあるでしょ?」
最初にすること? この男は何を言っているのだ? 罰金以外に何かすること?
「お客さん、まともな教育受けてます? 悪いことしたんだから、まず謝罪が先でしょう?」
直人は口を半開きにして、従業員の男を見つめるばかりだった。男は溜息をつく。
「あー、もういいですよ。警察に連絡しますわ。本番強要ってのは、要は強姦未遂ですからね。あんたちょっと警察にお灸すえられたほうがいいですよ」
懲役刑より恐ろしいこと
ここで直人は、自分が重大な見落としをしていたことに気づく。
あの痴漢事件は冤罪だったから、直人は自身の行為に対してなんの反省もしていない。しかし裁判の判決は、懲役六か月、執行猶予三年なのだった。
しかも今回は、半裸の女を押し倒したという事実がある。これで警察に通報された場合、間違いなくあの檻の中へぶち込まれる。弁解の余地なく起訴される。
──無罪判決を勝ち取ることは、非常に、非常に、困難です。
自分は実刑判決を受けて刑務所へ収監される。
しかし直人には、懲役刑より恐ろしいことがあった。
加藤清美に復讐を企てている件は、妻にも内密なのだ。
あの痴漢事件で、妻だけは私を信じてくれた。その夫が内緒でデリヘルを利用していて、ラブホテルで強姦未遂事件を起こして逮捕される。それでも妻は私を信じてくれるだろうか──。パパのこと信じてるから大丈夫だよ。真奈は再びきょろんとした瞳でそう言ってくれるだろうか──。
ダメだ、罰金は支払う、懲役刑も受け入れる。でも妻と真奈だけは裏切れない。


















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