「宗教はビジネスだ」と言えるこれだけの理由…お金と人を獲得するための競争を勝ち抜いてきた組織を、アダム・スミスはどう分析したか

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もちろん、ここでスミスがいっている競争とは、自由に自分たちの教えを人々に伝えることができる宗教団体どうしの競争のことだ。同じ町にあるプロテスタントの教会どうしの競争もそこには含まれる。宗教指導者が人々に暴力や抗争をたきつけるような教えを説けるのは、社会の中に宗教団体の数が著しく少ないときだけに限られる。

アップルとマイクロソフトを上回る収益

現代の宗教はビッグビジネスと化している。2016年に発表された調査によると、米国の信仰を基盤とした組織の年間収入は総計3780億ドルにのぼった。これは莫大な額だ。同年のアップルとマイクロソフトの収益の合計を上回り、米国の総個人所得の2%以上に相当する。メディアや娯楽産業の60%、全飲食店の売上の合計額の半分に当たる。

比較できる国際的な数字がないので、ほかの国々の実態については推測するしかない。それでも、アフリカや南米の国々をはじめ、ペンテコステ派の勢力が強く、成人の10人にひとりが十分の一税を納めていると十分に考えられる国はかなりある。

さらに10人に2人が所得の5%を納めているとすれば、それ以外の人々がまったく献金していなくても、信仰を基盤とした組織の総収入がそれぞれの国内経済において、米国の場合と同様の重要性を占めていることになる。

(翻訳:黒輪篤嗣)

ポール・シーブライト トゥールーズ大学経済学部教授

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Paul Seabright

トゥールーズ大学経済学部教授。2021年までトゥールーズ先端研究センター所長を務める。2021~2023年、オックスフォード大学オール・ソウルズ・カレッジのフェロー。

著書に、『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?――ヒトの進化からみた経済学』(みすず書房)、The War of the Sexes: How Conflict and Cooperation Have Shaped Men and Women from Prehistory to the Present(Princeton University Press)などがある。

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