「獣を殺すな!」「同じ目に遭わせてやる」「メイクするのは命への冒涜」と苦情が相次ぎ…それでも《現役・女性ハンター》が"狩猟を辞めない"理由

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害獣指定された動物であっても、当然1つの命であることに変わりない。猟師が駆除をする際も、決して命の尊厳を軽視してはいけない。

だからこそ、極力苦しめずに止め刺しをする必要があるのだ。新米だから、という言い訳は許されない。猟師としての意識が大きく成長した出来事だった。

もちろん、猟師側にも危険はつきまとう。Nozomiさんは幸い、狩猟中に大きなケガをしたことは無いが、周囲では「イノシシに噛まれて指を数本無くした」「太ももを噛まれて大ケガをした」「ほかの猟師に誤って撃たれてしまった」などの事故が起こっているという。

大げさでなく、猟師も命を懸けて、野生動物たちと対峙しているのだ。

女性ハンター
仲間とともに山に入るNozomiさん(写真:Nozomiさん提供)

数センチや0.1秒の差で生き死には決まる

狩猟を通じて命と向き合ううちに、死生観も変化していったとNozomiさんは明かす。

「狩猟を始める前は、私はおばあちゃんになって老衰で死ぬんだろうな、と思っていました。けれど、そうとは限らないんだと考えるようになりました。

私が仕掛けた罠の数センチ横に足跡があって、イノシシがかからなかったと思えば、違う罠にかかっていることがある。鉄砲でカモを撃つとき、タイミングが0.1秒ずれると逃げられてしまう。本当に、数センチや0.1秒の差で生き死には決まるんだって痛感しました」

「メメント・モリ(死を忘れるな)」という言葉がある。死はいつか必ず訪れる、だから今を大事に生きよう、という意味合いだ。

動物たちの命に向き合い続けているうちに、Nozomiさんも「いつ何が起こるかわからない」「ではいかに日々を生きるか?」と自身に問い続け、生き方そのものが確実に変わっていったのだ。

女性ハンター
鼻くくりでイノシシを狙う(写真:Nozomiさん提供)

猟師やYouTuberの金銭事情も、Nozomiさんは動画で赤裸々に明かしている。結論から言うと、どちらも赤字だという。

Nozomiさんが所属する猟友会の支部では、成獣のイノシシを1頭駆除すると1万円、ウリ坊は5000円の報奨金がもらえる。

最も多いシーズンでは16頭を駆除したが、罠に獲物がかかっていないか見回りをするためのガソリン代や、鉄砲の弾、壊れた罠の修復費などで出費が30万~40万円かかった。

ちなみに、イノシシを食肉加工業者に販売すると数万~数十万円になるが、東日本大震災の影響で動物が放射能に汚染されている可能性があるため、同県では禁止されている。

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