「博士課程=人生終了」という残酷な現実、日本の"科学立国"を揺るがす《文部科学行政》の致命的欠陥

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セミの亡骸
やっと博士課程を修了したと思ったら、そこで“人生終了”を言い渡される――。そんな日本の博士号取得者の現状には、セミの一生のようなむなしさが漂っている(写真:Caito/PIXTA)
主要国と比べて日本の博士号取得者は少ない。しかも、諸外国では増加しているのに、日本では減少している。これは、博士課程を出ても職がない場合が多いからだ。こうした現状を克服しようと、文部科学省は「科学の再興」を目指している。だが、その実現は容易でない――。野口悠紀雄氏による連載第161回。

博士課程入学者の急減という深刻な問題

9月に開催された文部科学省の有識者会議において「博士課程入学者が過去20年で14%減少し、とくに人文社会科学系では4割以上も減っている」という衝撃的なデータが示された。日本では少子化による大学進学者数の減少が続いているが、博士課程における減少幅はこれを大きく上回り、若手研究者の供給基盤が揺らいでいる。

日本の博士号取得者数の低さは、国際比較を見ても際立つ。 文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)がまとめた『科学技術指標2025』によると、人口100万人当たりの博士号取得者数は日本では123人だ(2022年度)。

これに対して、韓国(23年度)とイギリス(22年度)は約350人。アメリカ(20年度)は約280人となっている。

また、2010年度と最新年度を比較すると、ほかのすべての国で増加しているが、日本(6%減)とフランス(12%減)は減少している。

日本における博士号取得者の供給がこのように少ないことは、大学・研究機関のみならず、企業の研究開発や行政の専門職にも直接的な影響を与える。そして、日本が科学技術立国の基盤を失うことを意味する。

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