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政治・経済・投資 #ウクライナ侵攻、危機の本質

不意打ちのウクライナ和平案で何が起きているのか/ロシア寄りのアメリカ調停案を懸命に押し返すウクライナ/トランプはまた二転三転か

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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  • 領土割譲

ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク・ルハンスクの2州)、さらに南部クリミア半島を事実上のロシア領土とし、アメリカもこれを承認する2州のうち、ルハンスクはロシア軍がほぼ全域を制圧している。ドネツク州では約25%をウクライナ軍が守っている。クリミア半島は14年のクリミア侵攻以来、ロシアが全域を不法に占領中)。

問題点:この通りになれば、現在戦闘が続いている地域も含めドネツク州全域のロシアへの領土割譲が固定化される。ロシア軍が占領もしていない地域を割譲することにはウクライナ軍や国民の反発が予想され、ゼレンスキー政権としては、受け入れることは困難だ。

現在ウクライナ側が維持している地域には、要塞都市とも呼ばれる防御が固い一帯が含まれていて、ウクライナ軍が頑強に守っている。このため、仮にゼレンスキー政権がやむなく割譲を受け入れても、ウクライナ軍の中で撤退命令を拒否する部隊が出るとの予測も出ている。そうなれば、ゼレンスキー政権は窮地に追い込まれる。

「力による国境線変更」がなし崩しになる

また割譲が今後、国際秩序へ与える悪影響も懸念される。22年2月の侵攻開始により、国連憲章が定めた最も基本的な国際ルールである「力による国境線変更の禁止」に違反したロシアに対し、領土割譲という侵攻の「果実」を与えるからだ。この結果、プーチン政権が将来、再びウクライナなど周辺国への侵攻という誘惑に駆られる恐れがある。

さらに国連安保理常任理事国であるロシアの違法行為を、同じ常任理事国であるアメリカが容認するという事態は、国際関係における「法の支配」の動きを無視する米ロの傲慢な大国主義の表れだ。さらに今後アジアも含め他の地域で同様の侵略行為を誘発する恐れがある。

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【ウクライナのNATO加盟潰しにも躍起】

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