「今日、朝ごはん抜いてないですか?」
「寝不足? 真夜中に起きることが多くないですか?」
言われた相手は目を丸くして「なんでわかるんですか?」と驚く。
小池雅美医師は相手の見た目から、体の状態を言い当ててしまう特技を持つ。
その根拠となるのは無論、霊感の類ではなく、漢方・栄養療法のみならず、各種統合医療を通じて培ってきた豊富な経験にある。その人の顔貌、姿勢などから患者の栄養状態を言い当てる洞察力と血液データの読解力を駆使し、多くの患者を改善に導いてきた。
現在は外来の傍ら、全国で医師・医療従事者向けに栄養療法のセミナーを行い、業界でその名を知られる小池氏が、このたび初の著作「
気分の9割は血糖値」を上梓。発売前からAmazon3部門で1位を独占するなど大きな話題を呼んでいる。
「気分や集中力は血糖値の影響を強く受けています。だからこそ、血糖を安定させることは、ビジネスパーソンにとって『体調管理』を超えた戦略的スキルとなりえます。またそれを逆手にとれば、仕事術や人間関係の改善にも使うことができます」と小池氏。本稿では「夏目漱石の胃弱と情緒不安定」について語る。
胃弱に苦しんだ漱石
「文豪も、体調の揺れに悩んでいた」
そう聞けば、多くの人が意外に思うかもしれない。
『坊っちゃん』『こころ』『吾輩は猫である』など教科書にも載るほどの多くの名作を残した夏目漱石は、明治の知性を象徴する存在だ。しかし、生涯を通して体調は安定せず、日々の生活は決して順調ではなかった。
まず、漱石は深刻な胃弱に苦しんだ。慢性的な胃炎や潰瘍、消化不良に悩まされたことが伝記に記されている。体調が悪い時間のほうが、むしろ長かったのかもしれない。
そして、胃の不調と並んで特徴的なことが“極端な甘味嗜好”だった。ジャムを瓶からそのまま食べ、まんじゅうやアイスを毎日のように口にしていたという証言が残っている。
甘いものに強く依存していた姿は、現代の視点で見れば、エネルギー不足を補おうとする反応として「解釈」することもできる。
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