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漱石の名作は「胃弱」が生んだという大胆仮説。ジャムを丸ごと一瓶たいらげた男の、甘いものと怒りと名作の関係

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  • 小池 雅美 医師、こいけ診療所院長、なす医院非常勤医師、臨床分子栄養医学研究会特別認定指導医、漢方専門医
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同じ人物が、ある時期には怒りに傾き、ある時期には穏やかに振る舞う――。この落差は、漱石が特別だからではなく、人間が“体調に大きく影響される存在”であることを示している。

鉄が足りない人が怒りやすくなる理由

漱石は吐血も何度となく繰り返している。

出血は鉄を失うということだ。鉄が足りなくなると、血液が酸素をうまく運べなくなり、脳も酸素不足になる。

酸素が足りない状態では、脳の「落ち着かせるブレーキ」の働きが弱まり、かわりに「警戒モード」をつくる神経が活発になる。その結果、体が警戒モードになり、心拍が上がり、呼吸が浅くなり、焦燥や不眠が起きやすくなる。

さらに鉄は、やる気を出すドーパミンや、気分を安定させるセロトニンを作るためにも必要だ。鉄が足りなければ、意欲が落ち、感情の起伏も激しくなる。

漱石の怒りっぽさや神経の過敏さは、鉄欠乏と血糖の乱高下という生理的ストレスの重なりが背景にあったと考えられる。

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【繊細で深い文学の所以と体調】

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