総重量4トン・荷物300個のW杯遠征、サッカー日本代表「用具係のレジェンド」が紡ぎあげた"究極のチーム力"の秘密

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夢フィールドであれば3時間程度で終わる洗濯・乾燥・畳みの一連の作業が、ブラジルW杯のときには3倍以上かかることもあった。その結果、練習に出て用具のサポートをする余裕はなく、施設内で洗濯機・乾燥機と格闘する日が続いた。

今度のW杯はアメリカ・カナダ・メキシコという広大な3カ国の16都市で行われるW杯ということで、移動・時差はブラジル大会以上の負担となる。優勝しようと思うなら、8試合を消化しなければならない。

日本代表は通常、6月初頭から事前合宿に突入するため、7月19日のファイナルまで戦うとしたら、50日以上のハードな活動。その間にユニフォームや練習着などの衣類、ボールやコーン、マーカーなどの練習用具を準備して運ぶだけでも、大変な作業になる。

キットマネージャーはトラックで空港に先乗りして荷物を運ぶが、チェックインカウンターでは1個1個預ける必要がある。22年カタールW杯時の荷物は300個・総重量で4トンにのぼったという。次のW杯は期間が長く、環境も多種多様ということで、より多くの荷物を準備することになるだろう。

ワンチームで戦ってきた日本代表の歴史

乾燥機
夢フィールドには大型洗濯機3台と大型乾燥機5台が完備されている(写真:筆者撮影)

山根さんは洗濯・乾燥だけをやっていればいいわけではない。心身ともにタフでなければ務まらない仕事なのだ。

「普段もそうなんですが、(同じくキットマネージャーの)麻生英雄くんと2人で手分けしながら、1人が洗濯を担当して、もう1人が荷物の送り出しや受けに回るといった分業も進めています。W杯のときはチームのスタッフや選手が手伝ってくれますし、本当にすごいチームワークを感じます。みんなで一緒に荷物を運んだりすることで一体感が生まれるというのは結構あります」と、山根さんもしみじみ語る。

確かに、W杯などでも試合に出ていない選手が率先して片づけや荷物運びに参加する姿がよく見られる。10年南アフリカW杯のときも、直前まで絶対的エースだった中村俊輔さん(横浜FCコーチ)が控えに回ったが、その悔しさを押し殺して彼は毎日ボールや用具を運んでいた。

「02年日韓W杯の中山さん、南アのときの俊輔さんのようにトップレベルで活躍してきたベテラン選手が、試合に出られなくなったにもかかわらず、チームのために動くという献身的な姿を見せると、若い選手たちは頑張らざるをえなくなるんですよね。それは個人の成長、チームの成長に間違いなくつながると痛感させられます」

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