総重量4トン・荷物300個のW杯遠征、サッカー日本代表「用具係のレジェンド」が紡ぎあげた"究極のチーム力"の秘密
2002年の日韓W杯当時は山根さんも25歳前後。中山雅史さん(アスルクラロ沼津前監督)、秋田豊さん(高知ユナイテッドSC前監督)ら年長のベテラン選手が数多くいて、彼らに「これにおうよね」と言われてしまったら、本当に申し訳ない気持ちになるだろう。「早く改善しないといけない」と危機感を覚えたのも理解できる。
そこで、山根さんは代表チームの総務スタッフと相談。洗剤を入れることにしたのだが、どの洗剤を使うべきかという判断がまた難しかった。彼なりにさまざまな製品を試した結果、花王の「アタック」が最適解という結論に達したようだ。そして昨年、JFAソーシャルバリューパートナー&JFAサポーター契約が締結され、花王からアタックを提供してもらえるようになった。
「洗剤のことは解決しましたが、洗濯・乾燥時間や温度の調整は長年、模索を続けました。洗濯機に関しては、海外遠征のときは当然、現地の洗濯機を使いますけど、表示がよくわからなかったりする。ボタン1つで素材や時間や温度などが違ってくるので、通訳さんに来てもらって、理解してから操作する必要がありました。乾燥にしても、時間を短縮させたいからといって高温で回すと、しわの原因になる。そうならないように、いろいろ工夫を凝らしました」と山根さんは振り返る。
衣類を畳むことに関しても、高度な技術が求められる。洗濯・乾燥までは基本的に機械がやってくれるからまだいいが、畳む作業はどうしても手でやらなければいけない。見た目も美しく、着る選手が心地よい状態に整えることを迅速に進める必要があるため、やはり熟練度が求められる。そのテクニックも山根さんは時間をかけて習得した。
そのノウハウを、なでしこジャパンやほかの年代別代表チームのキットマネージャーたちにも伝授。今ではJFAのすべての代表チームの洗濯・乾燥技術が高いレベルに達している。
今だから話せるブラジルW杯の苦労話
そして迎える26年。森保一監督率いる日本代表は、最大のターゲットである北中米W杯に挑もうとしている。キャプテン・遠藤航選手(リバプール)が「W杯優勝」という大目標を公言しているとおり、彼らは本気で頂点を獲りにいくつもりだ。となれば、スタッフも最高の体制を整える必要がある。
12月5日の組み合わせ抽選会の結果を受けて、JFAはすぐに事前キャンプ地、大会中のベースキャンプ地を確定させる方針だが、宿泊先にどういう洗濯機・乾燥機が用意されるかはまったくの未知数だ。
「14年ブラジルW杯のときはサンパウロの郊外にあるイトゥがベースキャンプ地でした。そこに大きめの洗濯機と乾燥機は入れてもらったんですけど、業務用じゃなかったんで、洗濯にかなり時間がかかりました。しかも、ブラジルは頻繁に移動もあった。移動日はなかなか洗濯ができませんし、試合会場では練習着に加えてユニフォームも使う。相当大変でした」と、山根さんは苦笑する。



















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