総重量4トン・荷物300個のW杯遠征、サッカー日本代表「用具係のレジェンド」が紡ぎあげた"究極のチーム力"の秘密

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山根さんが言うように、今の日本代表では39歳の大ベテラン・長友佑都(FC東京)も練習から人一倍声を出して120%でプレー。ピッチ外でも率先してチームをサポートしようとしている。

「18年ロシアW杯に参戦した槙野智章さん(品川CC監督)なんかも、試合に出ていない仲間を引き連れて、『みんなでやろうよ』とボールや道具を運んでくれました。そういう姿はぜひ多くの人に見てもらいたい。選手は結局、自分をサポートしてくれる家族やコーチ、スタッフがいないとサッカーができないんです。森保さんもよく『環境を作ってくれる方に感謝します』と言いますけど、みんなの力で戦えていることを感謝しながら、彼らはプレーしていると思います」

山根さんも太鼓判を押す「人間力」を持つ面々は、10月のブラジル戦で歴史的勝利を挙げた。彼自身は欧州のビッグクラブでプレーする選手が増えてきたロシアW杯の頃から「ゆくゆくは日本もW杯で勝っていくんだろうな」と感じていたという。

カタールW杯ではドイツとスペインを撃破し、今回はサッカー王国を倒した。となれば、「次のW杯では本当に頂点にたどり着けるかもしれない」と大きな期待を感じているようだ。

「僕は次が6回目のW杯になりますけど、ここ1~2大会は『優勝』の2文字を意識しながら仕事をしてきました。自分が行ったW杯の中でグループリーグで敗退したのはブラジル大会だけですが、それ以外の大会でもベスト16の壁は越えられていない。僕らキットマネージャーも、チームの一員として貢献できることがあるはず。そこを追い求めて本番を迎えたいです」と、山根さんは気合いを入れる。

山根さんが意識する1つ1つの積み重ね

南アW杯を率いた岡田武史監督(現JFA副会長)は「用具係が何を言ってるんだ」とよく冗談交じりで話しかけてくれたという。山根さんは「用具係だからこそ、勝敗に関わる何かができるだろう」という叱咤激励だと受け取った。それからユニフォームや練習着1着1着、ボールや用具の1つ1つに、よりこだわりを持って向き合ってきた。

カタールW杯のときには、選手のロッカールームに代表スタッフが折った折り鶴を置き、感謝を伝えたというエピソードもある。それも、小さな積み重ねが日本を応援する機運の醸成につながると考えてのことだった。

「W杯の会場全部が日本を応援してくれたら、それこそ選手たちはホームで戦える雰囲気になる。そうなるように、僕らが少しでも尽力していけたらいいと思っています」

山根さんをはじめとした、力強い援軍を擁する日本代表。半年後の大躍進を心から祈りたい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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