『解任』を書いた元オリンパス社長に聞く 「目上の人を尊敬する日本の習慣が行き過ぎた」
──その後の不正を追及する過程や、社長解任に至る経緯が、著書に書かれています。そもそも、なぜオリンパスでこのような経営判断が続いたのでしょう。
目上の人を尊敬するという日本の社会的慣習が行き過ぎた面もあるのだろう。年上の人が間違ったことをした場合、その追及に遠慮がちになってしまう。
今回の不正は20年近く続いており、下山敏郎氏が社長を務めた時代から、(次の社長の)岸本正寿氏、菊川氏に至るまで何人もかかわっていた。菊川氏の時代に問題は拡大したわけだが。
──「日本人はサムライとイデオット(愚か者)に分かれる」と、これまで発言されています。
イデオットとは、たとえば先日(4月20日)のオリンパスの臨時株主総会で壇上に上がっていた人たちだ。不条理なことを言い、ふざけた行動をとる。
一方、サムライは信念を曲げず、人間関係によって態度を変えたりしない。たとえ戦うことになっても、妥協を選ばない。
私が知っているサムライの例を3人挙げよう。私のサポートをしてくれている宮田耕治氏は、オリンパスに40年以上も勤めて、引退して8年経ってからこの事件に対して立ち上がった。彼は菊川氏が社長の時代に専務を務め、ゴルフ仲間でもあった。しかし、そうであっても不正を許すことはできないという姿勢は、サムライの資質だ。
そして、オリンパスの内視鏡事業を育てた河原一三氏。優秀な技術者で、つねに製品や顧客のことを考えていた。彼は人を見抜く力があり、たとえ自分の上司であっても、きちんとした経営者でなければ敬意を見せることはなかった。
もう一人は、医者の金平永二氏だ。内視鏡手術の第一人者で、患者を第一に考え、必要があれば患者のために業界団体などと戦うこともいとわない。