『解任』を書いた元オリンパス社長に聞く 「目上の人を尊敬する日本の習慣が行き過ぎた」
──あなた自身もサムライ?
そうは思わない。同じ立場に置かれたら、多くの人が勇気を持って告発したと思う。たとえば夜道を歩いていて、犯罪を目撃したとする。あなたがその目撃者だったらどうする? 犯人が怖くて何も言わないだろうか。多くの人は警察に通報するのではないかな。
もし菊川氏が損失隠しをしていなければ、私はオリンパスの経営者であり続けて、会社の収益向上に貢献できていたと思う。
ただし、おカネよりも大事なものが私にはある。正直さや誠実さ、そして信念を曲げないこと。これが、私の信条だ。
──「一人ひとりはいい人間なのに、なぜ集団だと良心に反する行動を取るのか」との言葉が印象的でした。
いい人たちが共謀して悪いことをしたわけではない。技術者、工場の従業員、営業……現場の人たちは皆、一生懸命働いていた。問題はマネジメントだった。
オリンパスにはシステム上の問題があった。社長の人事において、下山氏が岸本氏を選び、岸本氏が菊川氏を選んだ。選ばれるのは、前任者に逆らうことのないタイプの人間ばかりだった。
たとえばサムライの一人、河原氏はオリンパスの収益源である内視鏡の生みの親であり、私から見てとても優秀なマネジメントができる人材だった。しかし、社長に選ばれることはなかった。