クマに襲われた人たちの"深刻な現状"――「命に別状はない」ではすまされない体と心に残る深い傷。"クマ外傷"治療にあたる救急医から学ぶこと

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そうしてクマが立ち去ったらどうすればいいか。

「まずは横を向いて流血による窒息を防ぎ、可能なら傷を圧迫止血して、救急車や助けを呼んでください。体の部位が取れた場合、縫合できるかどうかはわかりませんが、できたら持ってきてください。タオルに包んでも、そのままでも構いません」

そのうえで、「クマに襲われても命は助かることが多いので、諦めないでほしい」と中永さんは言う。

これまでなかった「術後感染」

今年のクマの人的被害は過去最高だった2023年と同じくらい多い。

中永士師明:1989年奈良県立医科大学医学部卒業。2015年から現職。日本救急医学会救急科専門医・指導医、日本集中治療医学会集中治療専門医、日本整形外科学会専門医、日本熱傷学会専門医など(写真:中永さん提供)

中永さんらが診た件数でも、23年は20例だったが、今年は現時点で18例。11月になってもクマ被害が多く発生している点が、23年と異なるそうだ。

中永さんが1つ気になっているのが、今年はクマ外傷によって感染を起こす事例が多い点だ。

クマ外傷では全身麻酔下で傷を大量の水で徹底的に洗い、破傷風ワクチンや抗菌薬を投与する。こうした処置をしてから、傷の処置を行う。

これまではこうした感染対策を行えばよかったが、今年は「それでは対応できない術後感染が起こっている」と中永さん。

「山の中にいるクマが持っている菌は、せいぜい土の中にいる細菌くらい。それが人里近くで暮らすようになり、生ゴミなどをあさるようになった結果、菌の種類が変わってきたのではないかと思っていて、今調べているところです」

大西 まお 編集者・ライター

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おおにし まお / Mao Onishi

出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、宋美玄 著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。

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