クマに襲われた人たちの"深刻な現状"――「命に別状はない」ではすまされない体と心に残る深い傷。"クマ外傷"治療にあたる救急医から学ぶこと

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心に傷が残るケースも少なくない。何度も被害時の状況を思い出し恐怖に陥るフラッシュバックや睡眠障害、気分障害になり、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と診断されることもある。

「当院ではICUの段階から、担当医が患者さんに『生きていてよかった』と思ってもらえるよう対話をしたり、必要に応じて精神科と連携したりして、早めから心のケアをしています。また、どんなに手を尽くしても体に傷が残るので、外見の変化による苦痛を和らげる『アピアランスケア』も重要です」と中永さんは話す。

「うつ伏せ」より「ダンゴムシ」

冒頭で紹介したとおり、クマの出没地域ではいつどこでクマに遭遇するかわからない。では、遭遇した場合どうすればいいのだろうか。

「秋田大では、地面に座って丸くなり、首のうしろを手で覆う『ダンゴムシ』のような防御姿勢を推奨しています。一般的にはうつ伏せが勧められていますが、田んぼや畑では口や鼻が農業用水に触れ、誤嚥性肺炎や溺水の危険があるので、勧めていません」

秋田大が進める「ダンゴムシ」の防御姿勢(イラスト:中永さん提供)

この防御姿勢をとってもクマは襲ってくるだろうが、顔と首さえ守れば被害を最小限に食い止めることができる可能性が高まる。

また、普段から外出時にはヘルメットやラグビーキャップで防護する。それが難しいならせめて帽子をかぶる。さらに防御用ベストを着たり、リュックを背負ったりする。こうした対策をとっておけば、より安全だという。

そして何よりも大事なのが、クマが完全に立ち去るまで防御姿勢を保持し続けること。恐怖から逃げ出したくなるが、すぐに動くと非常に危険だ。

「十分に時間が経ったと思って防御姿勢をやめたところ、まだ頭上にクマがいて再び激しい攻撃を受けたという方もいます。恐怖を感じると時間の経過を遅く感じると思いますが、少なくとも2分以上はそのままの体勢でいてください」

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