長崎新幹線は「全線フル規格」で進めるべきだ フリーゲージトレインにメリットは少ない!
実用化に向けて試験を繰り返していたフリーゲージトレインは2014(平成26)年11月下旬に走行装置である台車に異常が認められ、試験を中断したまま、いまも再開には至っていないのが実情だ。フリーゲージトレインに実用化の目途が立たなければ、2022年の開業はおぼつかない。
沿線の関係者がやきもきしているなか、フリーゲージトレインの欠点が改めてクローズアップされている。まず挙げられるのは、在来線区間では現行の特急列車と同じく最高速度が時速130kmに抑えられるために時間短縮効果が小さいという点だ。
長崎新幹線が開業すると博多-長崎間は現在最速の特急「かもめ」よりも31分短い1時間20分で結ばれると試算されている。こう記すと劇的なスピードアップが果たされたように見えるが、佐賀県内では武雄温泉-長崎間に設けられる嬉野温泉駅(仮称)の周辺を除いては時間短縮効果に乏しく、博多-佐賀間に限っては33分とわずか3分の短縮に過ぎない。
山陽新幹線に乗り入れできない!?
技術上の課題により、JR西日本がフリーゲージトレインの山陽新幹線への乗り入れを拒んでいる点も見過ごせない問題だ。フリーゲージトレインは車輪を移動させるという特殊な構造から、最高速度はいまのところ時速270km止まりとなっている。山陽新幹線では最も遅い車両でも最高速度は時速285kmだから、フリーゲージトレインは足手まといとなってしまう。
加えて、フリーゲージトレインのスペック上の軸重は12トン程度と他の車両と同程度であっても、軌間を変更できるという特殊な構造をもつためにばね下重量がかさみ、線路への負担がより増すのではないかという懸念も指摘されている。
もちろん、フリーゲージトレインが山陽新幹線に乗り入れている最中に故障されたら、JR西日本には手も足も出まい。いや、JR西日本が真に心配しているのは、フリーゲージトレインが万一事故でも起こしたらただ事では済まないという点だ。もしも高速走行中に車輪が動いたとしたら――。想像もしたくないことだが、その瞬間に新幹線の安全神話は崩壊してしまうであろう。
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