長崎新幹線は「全線フル規格」で進めるべきだ フリーゲージトレインにメリットは少ない!
批判を承知で主張すれば、長崎新幹線は全額国が負担して建設してよい事業だ。その根拠は2015年8月15日に「東洋経済オンライン」に配信した「西日本で新たに新幹線が走るのはここだ!」で申し上げたとおり。現状でも長崎線の特急列車は本数、総連結両数とも全国屈指の多さとなっており、新幹線元来の整備目的である在来線の救済という理念にも合致する。
営業主体となるJR九州が建設すべきという意見ももちろん正しい。だが、同社は近々株式を公開するとはいうものの、本業の鉄道事業では2014(平成26)年度に140億円の営業損失を計上したように先行きは不透明である。長崎新幹線の建設によってJR九州の経営が傾き、後で国が支援するということになるのであれば、最初から国が長崎新幹線を整備したほうがよい。迷惑を被る株主の数が減るだけでもメリットはあるはずだ。
素人考えと言われることは覚悟のうえで、財源には国鉄が残した長期債務の返済資金の一部を充当してはいかがかと考える。国に引き継がれた国鉄の長期債務は2013(平成25)年度末の時点で18兆1013億円であり、同年度におよそ3000億円が償還された。償還にはたばこ特別税による税収や一般会計国債費が充当されており、要は国民が負担して返済している。
輸送力が行き詰まりを見せた在来線を救済――。このような目的で建設される新幹線であれば、いま挙げた3000億円の一部を国民が新幹線の建設に当ててもよいのではないだろうか。
国鉄債務の返済資金を建設費に
国鉄の長期債務の処理にはさまざまな問題があり、詳細は別の機会に譲るとして、簡潔に述べておこう。現状では、JR東日本、JR東海、JR西日本の3社が新幹線譲渡代金という名目で返済に当てられているうち、724億円が整備新幹線の工事費に用いられている。それから国が負担した国鉄の長期債務は、利子が膨れ上がったことにより国鉄の分割民営化後にかえって増えており、やむを得ないとしてもその分も国鉄の長期債務の処理名目として国民が負担しなければならない点は疑問だ。
そもそも国鉄の長期債務とは、主として幹線の複線化や電化への投資、大都市圏の通勤ラッシュ対策への投資、不振を極めた貨物輸送の3点によって生じたものである。さらに言えば、高度成長期の国鉄の運賃は公共料金という名目で引き上げを抑えられたにもかかわらず、鉄道そのものは公共財とは見なされなかったから、投資は債務でまかなうほかなく、破綻を招いたうえ、今日にまでその影響が及んだ。
鉄道は国民の財産であるという考え方があれば国鉄の長期債務は存在しないという極論も言えるであろう。それはともかくとして、いま挙げた点を加味すれば、いわゆる国鉄の赤字とは分割民営化時に存在した繰越欠損金の残高10兆1621億円だけではないかと勘ぐりたくなる。
もちろん、財源が見つかったとはいえ、かつて「我田引鉄」と言われたように沿線の人口が少ない場所に新幹線を建設してはならない。しかしながら、一方で必要なところに必要な投資を行えないのも考えものであろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら