お目見えしたフリーゲージ車両の実力と課題 期待高まる長崎新幹線
試作車らしからぬ整った面構えは、将来の運行を担うJR九州の気合いの表れか。4月19日、JR九州の熊本総合車両所で、フリーゲージトレイン(FGT)の新型試験車両(第3次車)が公開された。
その車体には3月から東京―長野間で運行開始した北陸新幹線E7系の面影が見える。それもそのはず。E7系とFGTの車両デザインを担当したのは、どちらも川崎重工業だ。車両製造も4両編成のうち、川重が先頭車を含む3両を製作した。残りの1両は日立製作所の製造である。
九州新幹線・長崎ルートで活躍予定
FGTとは車輪の間隔を変えることで、線路幅が異なる新幹線区間と在来線区間の両方を走れるようにした列車だ。鉄道・運輸機構が開発し、2022年度開業予定の九州新幹線・長崎ルート(新鳥栖―長崎間)は在来線区間も走行するため、FGTの導入を前提として工事が進められている。
FGTの実験は1999年にスタートした。山形新幹線E3系をベースに開発した1次車、2次車による走行性能に関する試験は一段落した。今回の新型車両は3年程度かけて耐久走行試験を行う。ここで得られたデータを元に、今後量産車が設計、製造されることになる。
実用化への期待が膨らむ一方で、FGTにはネックになりそうな点があった。第一に、車輪間隔を変える特殊な装置を台車に取り付けているため、一般的な新幹線車両と比べ、車軸にかかる重量が大きいという点。第2に、最高速度が整備新幹線区間の速度制限プラスアルファの時速270キロメートルに抑えられている点だ。
本州からの観光客増を狙う長崎県では新大阪との直通運転を期待する。だが、山陽新幹線を運営するJR西日本は、軸重が重いとレールに及ぼす影響が大きいこと、また最高速度が時速270キロメートルでは、時速300キロメートルで走る他の列車への運行上の妨げになるなどの利用で、FGT乗り入れには消極的だ。本州との往来で博多乗り換えが必須となると、新幹線効果は半減しかねない。
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