「『ドンペン』の悪夢がまた…」「変える意味ある?」 JR東日本《Suicaのペンギン変更》考えうる"悪手すぎる選択"をした背景

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現在のデザインは23年に一般投票で決定され、24年から切り替わっているのだが、2年近くを経ても、定着しているとは言いがたい状況だ。

Suicaのキャラクター変更は、上記の事例と比べても、規模が大きく、影響が及ぶ範囲も広範になる。大きな困難が伴う大きな挑戦であることは間違いがない。

ヤン坊マー坊
こちらが1988年にリニューアルされた「ヤン坊マー坊」。同社によれば、このデザインが一番長くCMに使われていたというので、世の中の人の記憶に残っている顔かもしれない(画像:ヤンマー公式サイトより)
ヤン坊マー坊
グローバルな一般投票を行い、2024年にリニューアルされた現在の「ヤン坊マー坊」(画像:ヤンマー公式サイトより)

イメージキャラは「変えないほうがいい」

消費者の愛着を考えると、現状のペンギンキャラクターから大きくは変更せず、兄弟的なキャラクターを導入するというやり方も想定できる。ただ、これだと刷新感はなくなるし、そもそも「変更した意味はあるのか?」という疑問が湧いてくる。

ペンギンのキャラクターを生かしつつ、新たなキャラクターと併存させるというやり方もなくはないが、イメージの分散や、管理の手間やコストを考えると賢いやり方とは言いがたい。

また、過去のイメージに引きずられてしまうと、現在の「ヤン坊マー坊」デザインのように、かえって人々に受け入れられづらくなってしまう可能性もある。

一方で、Suica事業は拡充であって、廃止ではないため、継続性も重要になる。「刷新性」と「継続性」という2つの要素のバランスをとるのと同時に、現状のペンギンのキャラクターに勝るとも劣らない、親しまれやすいキャラクターを導入し、定着させる必要がある。

筆者だけでなく、多くの人々は「変える必要はあるのだろうか?」という疑問が拭えないだろう。イメージキャラクターは「変える必要がなければ、変えないほうがいい」という類のものだ。

ただ、一度「変える」という判断をしたのであれば、不退転の決意のもと、腰を据えて取り組まなければならない。

Suicaが導入された当初は、唯一無二のキャッシュレス決済サービスだったが、現在ではPayPayをはじめとするコード決済が普及し、キャッシュレス決済が乱立する状況となっている。

新キャラクターの導入とともに、Suicaが再び存在感を増すことができるのか、他のサービスの中に埋もれていくのか、今後も注視しておきたい。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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