日本初「イスラエル式OJT」は障害者雇用を変えるか、カフェ全体が「職業訓練施設」、実戦で就労能力養う

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
落ち着いた雰囲気の喫茶店。精神障害者たちが店舗運営を担うことで一般就労に必要な能力を身につけるための訓練施設でもある(記者撮影)

グレーを基調とした外壁からアンティーク調のランプが突き出し、閑静な住宅街の一角を照らす。どこかヨーロッパの風景を思わせる喫茶店「GOOD THE GOOD(グッドザグッド)」が10月、さいたま市大宮区にオープンした。

表向きは今どきはやりの「SNS映えしそうな店」だが、実はもう1つの顔がある。店舗運営のオペレーションを担うのは、重度の精神障害者たち。ここは、彼らが一般就労に必要な能力を身につけるための訓練施設なのだ。

モデルとしたのは、イスラエルの非営利団体「シェクロトブ・グループ(STG)」が同国内で展開する「リアルジョブ・トレーニング」。参加した障害者の35%以上を就職に結びつけるプログラムで、日本での導入は初めてという。

「1軒のカフェ」として勝負

その手法は文字どおり「実戦」に尽きる。STGはカフェや古着店、古書店をチェーン展開。いずれも接客や品出し、調理などの多彩な業務を精神障害者が担う。いわば店舗そのものが職業訓練施設となっており、利用者は「OJT」で技能を磨いていく。古書店はイスラエルでシェア3位の規模という。

日本にも企業や福祉施設が運営し、障害者の雇用創出を押し出す飲食店は存在する。ただ、STGは訓練施設であることを積極的にアピールしない。店員が障害者だと気づかずに利用する客が大多数で、単に「良い店」だから選ばれているのだ。

グッドザグッドの小洒落た雰囲気も、これにならったものだ。運営するスタートライン社(東京都三鷹市)の西村賢治社長は「あくまでも1軒のカフェとして勝負できるよう、スタッフには努力してもらう。メニュー開発にもこだわった」と語る。

次ページ利益は工賃として分配
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事