グレーを基調とした外壁からアンティーク調のランプが突き出し、閑静な住宅街の一角を照らす。どこかヨーロッパの風景を思わせる喫茶店「GOOD THE GOOD(グッドザグッド)」が10月、さいたま市大宮区にオープンした。
表向きは今どきはやりの「SNS映えしそうな店」だが、実はもう1つの顔がある。店舗運営のオペレーションを担うのは、重度の精神障害者たち。ここは、彼らが一般就労に必要な能力を身につけるための訓練施設なのだ。
モデルとしたのは、イスラエルの非営利団体「シェクロトブ・グループ(STG)」が同国内で展開する「リアルジョブ・トレーニング」。参加した障害者の35%以上を就職に結びつけるプログラムで、日本での導入は初めてという。
「1軒のカフェ」として勝負
その手法は文字どおり「実戦」に尽きる。STGはカフェや古着店、古書店をチェーン展開。いずれも接客や品出し、調理などの多彩な業務を精神障害者が担う。いわば店舗そのものが職業訓練施設となっており、利用者は「OJT」で技能を磨いていく。古書店はイスラエルでシェア3位の規模という。
日本にも企業や福祉施設が運営し、障害者の雇用創出を押し出す飲食店は存在する。ただ、STGは訓練施設であることを積極的にアピールしない。店員が障害者だと気づかずに利用する客が大多数で、単に「良い店」だから選ばれているのだ。
グッドザグッドの小洒落た雰囲気も、これにならったものだ。運営するスタートライン社(東京都三鷹市)の西村賢治社長は「あくまでも1軒のカフェとして勝負できるよう、スタッフには努力してもらう。メニュー開発にもこだわった」と語る。



















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