日本初「イスラエル式OJT」は障害者雇用を変えるか、カフェ全体が「職業訓練施設」、実戦で就労能力養う

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ブランド鶏卵を使ったフレンチトースト。プルプルとした食感で大人気だった(記者撮影)

その一例が、栃木県から取り寄せたブランド鶏卵を使ったフレンチトースト。頬張ると、口いっぱいにプルプルとした食感が広がる。10月下旬に開いたプレオープンでは、おかわりを求める客もいて大好評だった。

ただ、カフェが儲かったとしても、スタートライン社が利益を得るわけではない。グッドザグッドは障害者総合支援法に基づく「就労継続支援B型事業所」に当たり、同社は利用者数などに応じた国からの給付金を受け取る。カフェで得た利益は法に基づき、障害者に「工賃」として分配する。2年ほどで「卒業」してもらい、普通の飲食店へと送り出すことを狙う。

臨機応変さを養うノウハウ

日本の就労系障害福祉サービスはB型のほか、利用者と雇用契約を結ぶA型、2年しか通えず無給の就労移行支援がある。厚生労働省によると、これら3種の利用者は計48万人(2024年3月時点)程度。そのうち約7割を占めるのが、比較的簡単な作業が多いとされるB型だが、一般就労への移行率は約11%にとどまる。

なぜ一般就労につながりにくいのか。西村社長は「従来の就労福祉サービスは、障害者に失敗させたがらない。施設側が向き不向きを考え、『できる作業』を与えがち」と指摘する。つまり、「訓練のための訓練」となってしまい、実社会で求められる臨機応変さを養えないのだ。

グッドザグッドでは、利用者との定期的な面談を通じ、「やりたいこと」を叶えるためのロードマップを立てる。希望する業務の中身を細かく切り分け、どこでつまずくのかを把握。それぞれ対処法を講じ、1つずつハードルを乗り越えていく。

これを可能にするのが、スタートライン社が有するノウハウだ。同社は09年に創業し、障害者向けのサテライトオフィスや農園型就労を手がける。「障害者雇用支援」の市場を切り開いた先駆け的な存在で、精神障害に関する知見を蓄積してきた。

一言に精神障害と括っても、症状は千差万別。ただ、共通するのは知能や身体能力は健常者と何ら変わらないことだ。その人の特性を分析し、適切にケアすれば、メンタルの波をうまくコントロールできて問題なく働ける。

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