「データセンターが水を奪う⁉」 AIインフラ爆増の裏側でグーグルが隠蔽した"水使用量"
実際、地政学リスクに関する分析で知られるユーラシア・グループも報告書『Top Risks 2023』の中で、アメリカにおける水資源の問題を重要なリスクの一つに挙げ、次のように警告しています。
「水不足の影響は悪化するが、政府の対処する能力は変わらない。水資源の恒常的な減少に十分備えることができていないため、政策担当者は、資源を突然制限し再分配する短期的な緊急措置に頼らざるを得なくなる。米国の政策担当者は、発電、給水、工業生産、食糧生産と、水資源の保全の間で悩むことになる」
すでにアメリカの多くの地域では、水利用をめぐる緊張が高まっています。農業用水や生活用水の使用者が水不足に苦しんでいるなかで、新たな巨大消費者であるデータセンターが登場し、さらに状況を複雑化させています。
このように、水資源をめぐる競合は、国と国とのあいだだけではなく、地域社会の内部でも顕在化しつつあります。その背景には、クラウドやAIといった先端技術を支えるインフラの拡張という避けがたい流れがあります。
隠されていたデータセンターの水利用
データセンターがどれだけの水を使用しているか、その実態は必ずしも明らかではありません。ときに透明性を欠き、情報が意図的に伏せられるケースもあります。
米オレゴン州のダレス市(以下、ダレス)にグーグルのデータセンターが建設されたのは2006年のことでした。同社は過去18年間で約18億ドルを投資し、200人以上の雇用を創出したほか、地域の非営利団体などに3100万ドル以上を寄付しています。さらに上下水道インフラの整備にも資金を投じ、地域経済に一定の貢献を果たしてきました。
一方で、ダレスは干ばつの影響を受けやすい地域であり、農業・漁業関係者や環境団体の間では、グーグルの水使用量に対する懸念が根強く存在していました。
そのような状況下で、グーグルが新たに2基のデータセンターを建設する計画が持ち上がりました。市はこれを誘致するために、固定資産税を1基目で50%、2基目で40%減免する優遇措置を提示しました。見返りとしてグーグルは、各データセンターの着工時に300万ドルを市に前払いするという内容です。市議会はこの契約を満場一致で承認しました。



















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