ルネサス閉鎖工場の復活に元社員「複雑な気持ち」 甲府工場が10年ぶりに再稼働、地元の反応は?

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民家と田んぼの中にたたずむルネサスエレクトロニクスの甲府工場。元社員の男性は「ここから工場がよく見えるんです」と案内してくれた(記者撮影)
半導体業界がざわついている。震源地は時価総額で一時、世界一となったアメリカのエヌビディアだ。AI半導体ブームに乗って急成長し、マイクロソフトなどGAFAMも一目置く。『週刊東洋経済』8月10日・17日合併号の特集は「半導体 覇権」。日本勢は巨額投資で巻き返しに必死だが……
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「裏切られた気持ちはいまだに持っています。本来は喜ばしいことなのですが、正直、複雑な気持ちです」

こんな思いを吐露するのは、ルネサスエレクトロニクス甲府工場に勤務していた男性だ。地元の長野県南アルプス市に住み、当時は日立製作所だった甲府工場に就職。2014年に閉鎖されるその日まで勤務を続けてきた。

当時、工場周辺には日立の研修所や社員寮が建ち並んでおり、最大で1000人規模の従業員が働く「企業城下町」として栄えていた。

2010年に発足したルネサスエレクトロニクス。日立製作所・三菱電機のロジック半導体部門の統合で誕生したルネサステクノロジに、NECエレクトロニクスが合流して誕生した。

”日の丸”を背負った半導体メーカー

が、業績悪化を受けて2013年に官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)が1383億円を出資。INCJが最大69%の株を保有したことを受け、”日の丸半導体メーカー”となった。これまでルネサスは工場への投資を絞る「ファブライト」戦略を進めてきた。2013年に3.3万人だった従業員は、2015年は2万人にまで激減。複数工場の閉鎖・売却に大ナタを振るった。

INCJは2023年末に全株を売却し、ようやくルネサスは“普通の会社”となった。2013年に2000億円に満たなかった時価総額は、足元で4.5兆円となっている。

ルネサス復活を印象づける出来事の1つが、山梨県にある甲府工場の再稼働だ。同工場は2014年10月、経営危機時にルネサスが拠点のリストラを進める中で閉鎖した工場の一つ。新たに工場を稼働させるのは2010年の会社発足後初のことだ。

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