「継ぐのは私じゃダメなの?」ーー。幼い頃の疑問を乗り越え4代目になった彼女、「ガッツマン」を武器に下請け依存を脱却した手腕
あまり知られていないが、奈良県は靴下の生産量で日本一を誇る。奈良県橿原市に拠点を置く巽(たつみ)繊維工業所も長年にわたり靴下のOEM生産(相手先ブランドによる生産)を手掛けてきた。
しかし、現在4代目社長の巽美奈子さんが2015年、家業に戻った時、会社は存続できるかどうかの瀬戸際にあった。
美奈子さんの入社当時、社員は両親とスタッフ3人という状況だった。靴下の生産は安価な海外が主要となり、国内生産はわずか9%。その市場を他社と取り合っている、いわゆる斜陽産業だった。3代目社長の父・亮滋さんからは「来月どうなるかも分からない。大変やで」と伝えられたという。
だが、父が生み出した自衛隊員向けの高耐久靴下「GUTS-MAN(以下、ガッツマン)」の可能性を信じ、美奈子さんはその市場展開に尽力。現在は父から代表を引き継ぎ、会社の経営を任されている。
いったいどのように、伝統企業に新たな価値と持続可能な利益構造をもたらしたのか。
祖父から言われた「婿養子をもらうんやで」
幼少期の美奈子さんは、家業である靴下工場の敷地内で妹とともに過ごすことが多かったという。工場の敷地は5000平米ほどの広さがあり、10人ほどのパート従業員たちが素早く靴下の仕分けや検品する作業風景を身近に見て育った。



















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