「継ぐのは私じゃダメなの?」ーー。幼い頃の疑問を乗り越え4代目になった彼女、「ガッツマン」を武器に下請け依存を脱却した手腕

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2024年4月に、美奈子さんは代表に就任。かつてOEMで年商10億円あった時代に比べて規模は小さくなったが、美奈子さんの経営手腕により利益率が大幅に向上し、利益を次の投資に回せるようになった。

亮滋さんは、この利益確保ができたことで、「娘に代を譲る目処が立ちました」と語っている。金融機関からも「後押ししたい会社だ」と評価され、以前とは全く異なる状況になっているという。

その後、ガッツマンだけでなく、新商品である薄い腹巻き「ならまき」をローンチ。既存の顧客に対して新しい商品の情報を伝え、継続的に支援を得ている。

薄い腹巻き「ならまき」
薄い腹巻き「ならまき」を開発(写真:筆者撮影)

子育てと経営の「二足の草鞋」

美奈子さんは2年前に結婚。戸籍上は夫の籍に入ったが、仕事は旧姓のままを選んだ。

実は祖父に言われ続けた婿養子のことが頭から離れず、結婚相手やその両親には「言いづらいな」という気持ちもあり、悩んだ時期があったという。

「(婿養子は取れないことを)両親に相談したら、『全然気にしなくていいよ』と言ってくれました。でも、ここの社長としては『巽美奈子』としてお仕事したいなと思って、今の形になりました」

昨年には第一子を出産し、産後2カ月ほどで職場に復帰した。「自分の席の横にベビーベッドを置いて、娘をあやしながら仕事をしていました」と当時を振り返る美奈子さんの表情には、大変さの中にも充実感がにじみ出ていた。

2024年3月、美奈子さんは大阪商工会議所の「ブルーローズ賞」(女性リーダー賞)を受賞している。その際、奈良県で受賞した初の女性だったことを受けて、30名の受賞者に向けて代表スピーチを行った。

「私が登壇していいのかなって思いもありましたけど、皆さんから『女性というしがらみで生きてきたから響いた』と言ってもらえて。私も、女性として苦労してきたことはもちろんあるけれど、『女性だからこそ、評価されている』という部分をプラスに変えて、これからの糧にしたいなって思っています」

取材が終わりに近づくころ、彼女はふとこのように語った。

「靴下って、どなたとも話が膨らむんですよ。履かない人には『なぜ靴下を履かないのか?』という話題で盛り上がったり(笑)。すごくいい家業で、いい仕事をさせてもらってるなって思います」

巽さん親子
これからも親子二人三脚で挑戦を続けていくという(写真:筆者撮影)
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【あわせて読む】「当初は月に数足しか売れず…」。小さな靴下工場が挑戦し続けた「自衛隊のための一足」、いま「究極の五本指ソックス」として支持される理由
池田 アユリ インタビューライター

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いけだ あゆり / Ayuri Ikeda

インタビューライター。愛知県出身。大手ブライダル企業に4年勤め、学生時代に始めた社交ダンスで2013年にプロデビュー。2020年からライターとして執筆活動を展開。

現在は奈良県で社交ダンスの講師をしながら、誰かを勇気づける文章を目指して取材を行う。『大阪の生活史』(筑摩書房)にて聞き手を担当。4人姉妹の長女で1児の母。

HP:https://www.foriio.com/amayuri4

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