大河「べらぼう」紛争か通商か、ロシア船来航に松平定信が採った「秘策」とは

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定信は、ラクスマンが江戸に来航したいと粘った時は、強硬な姿勢を幕府側は示しつつも、とにかく穏やかに対応することが大切と考えていました。

ロシアと交易することは好ましくない

一方、ラクスマンが長崎に来航した際にはどうするのか。定信は、交渉は蝦夷地よりも長崎のほうが適していると考えていました。ロシアと「交易することは好ましくない」と定信は感じていましたが、ロシア船を長崎にまわらせておいて、交易はダメだと拒否したならば、好んで紛争を招くようなものです。

だから、まずはロシアに長崎で通商を要求させ、交渉の形式は「代物替え」にするなどの交渉をさせる。そのうえで、長崎で交易するか、蝦夷地で交易するか、おいおい評議するのがいい。これがラクスマンが長崎にやって来てしまった際の幕府の対応方針でした。

定信は消極的ではありますが、ロシアとの通商を覚悟していたのです。が、定信としてはロシア側に「長崎にまわるように」伝達すれば、おそらく長崎に来航することはないと踏んでいました。定信の予想は的中し、ラクスマン一行は、函館を出港した後、長崎に向かわず、オホーツクに去ります。定信は内心、ホット胸をなで下ろしたことでしょう。

(主要参考文献一覧)
・藤田覚『松平定信』(中公新書、1993年)
・高澤憲治『松平定信』(吉川弘文館、2012年)

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

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はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数
X: https://twitter.com/hamadakoichiro

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