大河「べらぼう」紛争か通商か、ロシア船来航に松平定信が採った「秘策」とは

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同書によると、厳しい対応をすることはよろしくないとあります。「礼と国法」をもって相手(ロシア側)と接することを定信は表明しています。

つまり、強圧的または暴力的な対応ではなく「礼」(礼儀)にかなった対応が大切だというのです。とはいえ、国交関係のない外国船を安易に受け入れる訳にはいきません。単に「ダメだ」と要求を拒否するのではなく、自分の国にはこういう「国法」があるからダメだと主張しようというのです。

長崎に来て、そこで指示を受けよ

ラクスマンに対し、幕府は「異国人に諭さる御国法書」(以下、国法書)を与えることになるのですが、そこには「国交なき異国の船が日本の地に来る時は、或いは召し捕え、または海上で打ち払うこと、昔からの国法であり、今もその掟に違うことはない」と書いてあります。

国交関係のない外国船が日本にやって来たら、乗員を捕縛するか、海上で打ち払うのが、古よりの「国法」だというのです。極めて強硬な姿勢と言えるでしょう。これは「国法書」の冒頭の一文ですが、同書のすべてが強硬というわけではありません。最後のところには次のような文章があるのです。

「長崎に来たとしても、信牌(江戸幕府発行の貿易許可証明書)がなければ通ることはできない。また通信・通商のことは、定めている外は、濫りに許可することはできない。だが、なお望むことがあるならば、長崎に来て、そこで指示を受けよ」と。

定信としては、ロシア船が無防備な江戸に来航することは何としても避けたいものでした。しかし、江戸への来航を強硬に突っぱねたのでは、最悪の場合、ロシアと戦争になるかもしれません。日本の防衛体制が不十分な時に、そのような有事となれば、大変です。外交交渉の地は長崎であるので、ロシア船にはまずはそこにまわってもらう。ただ、急に長崎に来航しても、信牌がないと入港できません。そこで定信はロシア側に信牌を与えることを決断しています。ロシア船が江戸に来航すること、そしてロシアと紛争状態になることを定信は避けようとしたのです。

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