がん検診一筋の60代医師が「ステージ4」の進行がんに。《毎年検診を受けていたのに…》それでも「やっぱり検診は必要」揺るがぬ考え
10月10日に実施された検討会では、松田さんがかかった肺がんについて、「重喫煙者に対して、被曝量が少ない低線量CTを実施する」という方針が固まった。2023年度から希望市区町村でモデル事業を実施するという。
「私の場合、タバコは40年前に5年間ほど吸っていただけなので、どちらにしても該当しませんが、喫煙者は肺がんのリスクが非常に高いので、効果がある。一方で、自治体がやるとなると税金を使うので、タバコを吸っている人たちに手厚くしていいのかという反対意見も出るかもしれませんね」
がん検診をみんなが当たり前に受ける社会へ
話は松田さんの病気に戻る。
ステージ4の肺がんと診断されたが、その後の遺伝子検査でEGFRという遺伝子に変異があるタイプの肺がんであることがわかった。このタイプの肺がんは非喫煙者に多く発生する。
松田さんの場合、転移があるため手術はできないが、体中に散らばったがんを叩く抗がん薬(分子標的薬)を毎日内服し、2週間に1回の点滴(血管新生阻害剤)使い始めたところ、がんが小さくなり、転移の影もなくなった。気になる副作用は、皮膚の乾燥や皮膚炎、爪周りの炎症ぐらいだという。
体調もよくなった今は、フルタイムで検診業務を続け、週末には妻と好きなワインをたしなむ。10月から講演で全国各地を訪ねる活動を再開した。
2025年に実施された内閣府の「がん対策に関する世論調査」によると、2年以内にがん検診を受けたことがある」の割合は42.7%。受診した理由で多かったのは「家族・友人などの身近な人でがんにかかった人がいるから」で28.8%だった。
対して、「今までにがん検診を受けたことはない」の割合は34.9%。受診しない理由は「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」が23.9%、「費用がかかり経済的にも負担になるから」が23.2%、「受ける時間がないから」が21.2%だった。
がん治療は日々進歩している一方で、高額化もしている。早期で発見すれば治療にかかる体への負担だけでなく、費用の負担も軽くて済むが、進行したがんで見つかれば、体への負担も、費用面の負担も大きい。
「体調はよくなったけれど、やはり長く続く医療費のことを考えると怖い。経済的理由で治療の継続をあきらめる人がいても不思議ではない」と松田さんは話す。
一方、現在のわが国のがん検診は課題も多いが、そのぶん“伸びしろ”があるともいえる。
「2人に1人ががんになる時代。だから自分事として捉えることが大事。そのためには『受けないほうが悪い』といった考えではなく、みんなが当たり前に受けられるようにしていかないと。そうすれば、がん検診はもっとよい制度になります」
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら