がん検診一筋の60代医師が「ステージ4」の進行がんに。《毎年検診を受けていたのに…》それでも「やっぱり検診は必要」揺るがぬ考え

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がんで亡くなる人が多い、その理由の1つとして考えられるのが、わが国の検診体制の“ゆるさ”だ。

例えば、大腸がんは早期発見さえできれば、5年生存率は9割以上だ。死亡率が高いということは早期発見がなされていない=がん検診(検便)を受けていない、あるいは要精密検査と言われても受けていない、といったことが考えられる。

では、どれくらいの人ががん検診を受けているのか。それについては国立がん研究センターががん検診受診率を公表している。2022年の大腸がん検診を見ると、男性約48%・女性43%だ。だが、松田さんは「あの数字はウソです」と言い切る。

「あれは『国民生活基礎調査』という国が行うアンケートに基づく数値でしかない。アンケートというのは本人の記憶によるもので、極めて曖昧。具合が悪くて病院で検査を受けたものを“検診”として回答している人もいないとも限らないのです」

なぜ実数を把握できないのかというと、日本の検診制度がまさに“ゆるい”からだという。

日本の検診には、「対策型」と呼ばれる自治体が行う住民検診、職場で行う職域検診と、「任意型」と呼ばれる個人的に受ける人間ドックがあり、検診内容はそれこそ住民検診では決められているものの、それ以外はバラバラだ。

受診者に関しても、住民検診なら実数が把握できるが、それ以外の方法だとわからない。「これでは、どんな検診が望ましいのか検証もできないし、科学的根拠も出せない」と松田さんは言う。

「少なくとも職域検診は強制力があるぶん、受診率が高い。だからこそ自社の考えでやるのではなく、まずは“国の推奨するがん検診だけ”を行ってほしい。エビデンスがない新たな検診法に手を出す必要はまったくないのです」

もちろん住民検診の受診率を上げる工夫も必要だ。大腸がんの死亡率が低い韓国は、実はがん検診の受診率が7割と高い。がん検診でがんが見つかった場合、見舞金が出るそうだが、「そういうしかけも必要」と松田さんは言う。

新たな「がん検診」も検討中

国が推奨するがん検診は基本的に、有効性(死亡率の低下)と検査の費用対効果、そして受診者への体への負担などを総合的に見て決まる。そして、その方法については「がん検診のあり方に関する検討会」で定期的に議論されている。松田さんも13年にわたって委員を務めた。

現在は、肺がんのX線検査と喀痰(かくたん)検査、胃がんのバリウム検査と内視鏡検査、大腸がんの検便(便潜血検査)と内視鏡検査、乳がんのマンモグラフィー、子宮頸がんの細胞診検査の5つのがんでそれぞれ行われている。内視鏡による大腸がん検診については、日本を含めて複数の国で有効性が検証中である。

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