高市政権は最初の難関「防衛費増額」をどう賄うか?「GDP比2%」を前倒しで実現するやり繰りは、復興増税の転用か赤字国債か

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それでもなお、防衛関係費を8.9兆円よりも増やすならば、追加の財源確保が必要になる。それを赤字国債で賄うわけにはいかない。

東洋経済オンラインの拙稿「日本の防衛費は『対GDP比2%』へ倍増できるのか」でも述べたように、5年や10年も経てば周辺国が強化する軍事力に比して陳腐化する防衛装備品が続出しうる。そうなれば、短期間でさらに高度な防衛装備品を購入しなければならず、一度買った防衛装備品は長期間使用するわけにはいかない。

だから、国債で防衛費を賄うと、その恩恵を受ける期間はごく短期間にとどまるものの、その元利償還費の負担が長きにわたり国民に及ぶことになり、恩恵を受けない将来の国民が目先の防衛装備品のために負った借金を返済することになる。

インフラや教育の2、3倍も防衛費に費やす国になる

加えて、防衛関係費は、いまや一般会計において社会保障関係費に次ぐナンバー2の金額の多い費目となっている。

対GDP比2%を超えて防衛関係費を増やせば、12兆円とか15兆円とかという金額となる。その金額は、2025年度の当初予算における公共事業関係費約6.1兆円、文教及び科学振興費約5.5兆円に比して、2倍、3倍といった金額に達する。

インフラ整備や教育のために年間に費やす支出の2倍や3倍も防衛に費やすということでよいのか、多くの国民がすんなりと受け入れられるかが問われる。

防衛三文書の改定を進めて防衛力強化を図るなら、安定的な恒久財源を確保して財政基盤も強化しなければならない。防衛装備ばかり強くても、それを財政的に支える能力に欠ければ、国民の生命と財産は守れない。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶応義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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