高市政権は最初の難関「防衛費増額」をどう賄うか?「GDP比2%」を前倒しで実現するやり繰りは、復興増税の転用か赤字国債か

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防衛費の増額には、すべてではないが一応財源が確保されている。それは、一般会計にある防衛力強化資金である。23年度に設置されたこの資金は、25年度当初予算で計上された防衛関係費(約8.7兆円)のためにも一部取り崩され、残りは約1.7兆円である。

この約1.7兆円は、そもそも26年度と27年度の防衛関係費の財源としてとって置いてあるものである。それを25年度に取り崩せば、26年度以降の防衛関係費の財源を別途用意しなければならなくなる。

しかも、25年度当初予算の防衛関係費は約8.7兆円で、対GDP比2%には届いていない。それでも、「今年度中に前倒し」できるのか。

現在の防衛三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)をつぶさにみると、防衛関係費について、防衛力整備計画には「本計画期間の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、(中略)40兆5000億円程度(27年度は、8兆9000億円程度)とする」という記述がある。

25年度中に0.2兆円増額すれば「GDP比2%」をクリア

防衛三文書は一体的なものだから、国家安全保障戦略で定めた「対GDP比2%水準」と、防衛力整備計画に記された「27年度に防衛関係費を8.9兆円程度」とすることは、整合的なものといわなければならない。

ということは、所信表明演説でいう「対GDP比2%水準」に相当する防衛関係費は、8.9兆円ということになろう。

ちなみに、国家安全保障戦略に記された前掲の文言には、「現在の」GDPの2%に達するようにするとある。国家安全保障戦略が閣議決定されたのは22年12月である。22年度の名目GDPは567.1兆円で、その2%というのは、約11.3兆円となる。

その金額と防衛関係費との差は、海上保安庁の経費、研究開発やサイバー安全保障関連の経費や、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)と米軍再編に関する経費が、別途算入される。

高市首相は、10月28日にアメリカのトランプ大統領と会談した後、防衛費について「特に数字を念頭に置いたやりとりはなかった」と記者団に語った。また、10月29日に小泉進次郎防衛相と会談したアメリカのヘグセス国防相は、防衛費の具体的な数値目標について「アメリカ側から日本に何かを要求したことは一切ない」とした。

これらを踏まえると、25年度の防衛関係費を、当初予算の8.7兆円から最低でも0.2兆円増額すれば、防衛関係費だけでも前倒しして「対GDP比2%水準」に達したといえよう。この金額なら、赤字国債を増発するまでもなく、防衛力強化資金の残高の範囲内である。

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