「できればしっかり辞めたかった」退職代行サービス利用者を「甘え」と批判する人が知らない"真実"

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まず、ハラスメント体質の企業や長時間労働を強いられる企業に入社した場合、心理的安全性が確保されていない環境のため、上司に退職を切り出すこと自体が大きなハードルとなる。「すぐに辞めて新しい企業へ移りたいが、直接言い出すのは難しい」というジレンマから、退職代行という手段を選ぶケースも少なくない。

一方で、コンプライアンス体制が整っているように見える企業でも、退職代行を利用する人は存在する。東京商工リサーチの調査を見ると、退職代行業者からの連絡を受けたことがある企業の割合は、中小企業が6.5%なのに対して、大企業では15.7%に上る。

新卒入社した大手企業を9カ月で退職した女性

大企業で退職代行を利用する理由は、大きく2つに分かれる。

1つは、コンプライアンス体制が形骸化しているケースだ。大企業は部署や支店によって働き方が大きく異なる。制度が整備されていたとしても、配属先によってはサービス残業の常態化や過度な「詰め」が行われていることもある。

例えば、新卒で入社した大手企業を9カ月で退職した女性はこの事例に該当する。女性は筆者の取材に対し、「上司から、他の従業員がいる前で体型を揶揄されたり、些細なことで怒鳴られることが続きました」と、言葉に詰まりながら当時の状況を説明してくれた。

会社に行くことが億劫になり、次第にトイレに駆け込んで涙を流すようになったことも語っていた。「できればしっかり辞めたかった」と悔しさを滲ませる女性の姿は、「気軽に退職代行を使う若者」というステレオタイプとはかけ離れたものだった。

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