「できればしっかり辞めたかった」退職代行サービス利用者を「甘え」と批判する人が知らない"真実"
また、企業との条件交渉のために退職代行を活用する人もいる。会社を辞める際には、複数の上司と面談し、説得しながら退職日や有給休暇の消化などの条件を決める必要がある。転職先が決まっている場合、退職日をずらすことはできないが、企業がその日程に合わせて後任を確保できるとは限らない。結果として、新しい会社の入社日ギリギリまで働いたり、サービス残業を強いられたりするケースもあり、多くの場合、従業員側が「折れる」ことになる。
会社と従業員がわだかまりを残さずに退職することは難しい
企業と従業員は契約関係である以上、利害関係でもある。その当事者同士が交渉を進めると、お互いの立場や感情が介入し、スムーズに進まない可能性がある。また、従業員が心身ともに疲弊している場合、自分で交渉を進めることは現実的とは言えない。
企業の組織体制は基本的に縦割りだ。配属や採用などの権限が各部署に委ねられていることも多く、第三者が介入する組織体制が整備されていることは少ない。
企業にとって、コストをかけて採用した従業員が簡単に退職できる体制を整備するメリットは薄く、退職すること自体を「裏切り」と捉える文化も根強く残っている。そのため、今後も退職しやすい環境が実現することは難しいと思われる。現時点では、退職代行が一定の役割を果たしている側面は否めない。
ただし、退職代行が提供するサービスには、民間企業、労働組合、弁護士事務所がそれぞれ提供しているものがあることは把握しておきたい。このうち、弁護士資格を持たない民間企業が提供するサービスでは、退職意思の通知しか認められていない。そのため、有給消化や未払い残業代などの交渉事項がある場合には、本人が直接交渉しなければならなくなる可能性がある点に注意が必要だ。
退職代行の使用をオープンにして転職に成功している人もいるが、退職回数が増えると転職活動で不利になることもある。そのため、退職代行はあくまで退職するための選択肢の1つとして位置づけておきたい。
転職市場が活況となり、自律したキャリア形成が求められる現代。働く人の価値観は変化しつつあるが、まだまだ退職のオープン化は実現していない。企業と会社員の利害関係を調整する仕組みが整い、退職代行が必要なくなる日は訪れるのだろうか。
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