「カネもかかる、技術もいる。でも…」 "超マニアック"博物館《国立民族学博物館》が、貴重な資料の「露出展示」にこだわる"超シンプルな理由"

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「展示されている物をね、見てるだけではわからへんやないか、というわけです。触ってみぃ、重さを量ってみぃ、なんなら匂いも嗅いでみぃ、と言わはった。そしたら、ちょっとぐらい、その物のコンテクストがわかるやんか」

文化とは頭だけで理解するものではなく、からだ全体で体感するものである。

「だから、ガラスケースに入れたらあかん、と言わはって、露出展示にこだわったんです。しかしこれは、理念は誠に素晴らしいんやけどね……」

国立民族学博物館
写真は、日本の文化を伝える展示。剥き出しでの見せ方にこだわっている(写真:国立民族学博物館提供)

理念は素晴らしく、現実はカネがかかる

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先生が口ごもる。剥き出しでの展示は、技術的にも費用的にも大変なのだ。通常であれば、展示資料をガラスケースのなかに収めて、動かないように固定するだけ。しかし民博ではまったく異なる展示システムを開発する必要があった。

「専門の展示業者さんが集まって、いろんなアイディアを出してね。格子状の金属壁に金具や天糸(てぐす)を使って展示物を固定する案に落ち着きました。グラグラせんように固定せんとあかんから、このシステムはだいぶ精密につくられています」

民博の本館展示場は全体に黒い壁で統一されている。その壁に、所狭しと並ぶ仮面などは、まるで宙に浮いているようでかっこいい。久保先生に言われてから、改めて壁の様子をよく見ると、たしかに格子状につくられていることがわかった。

「このシステムでは研究者が自分で設置することはできへんから、必ず展示業者さんに入ってもらわんとダメなんです。だから民博の展示にはお金がかかるんやね」

樫永 真佐夫 国立民族学博物館教授/文化人類学者

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かしなが まさお / Masao Kashinaga

国立民族学博物館教授、文化人類学者。1971年兵庫県生まれ。2001年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。10年、第6回日本学術振興会賞受賞。著書に『道を歩けば、神話 ベトナム・ラオス つながりの民族誌』『殴り合いの文化史』(左右社)他多数。23年より『月刊みんぱく』編集長。ボクシング、釣り、イラスト、料理など、いろいろする変人二十面相。

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ミンパクチャン ルポライター

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みんぱくちゃん / Minpakuchan

ルポライター、市井の国立民族学博物館ファン。

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