「カネもかかる、技術もいる。でも…」 "超マニアック"博物館《国立民族学博物館》が、貴重な資料の「露出展示」にこだわる"超シンプルな理由"
「展示されている物をね、見てるだけではわからへんやないか、というわけです。触ってみぃ、重さを量ってみぃ、なんなら匂いも嗅いでみぃ、と言わはった。そしたら、ちょっとぐらい、その物のコンテクストがわかるやんか」
文化とは頭だけで理解するものではなく、からだ全体で体感するものである。
「だから、ガラスケースに入れたらあかん、と言わはって、露出展示にこだわったんです。しかしこれは、理念は誠に素晴らしいんやけどね……」
理念は素晴らしく、現実はカネがかかる
先生が口ごもる。剥き出しでの展示は、技術的にも費用的にも大変なのだ。通常であれば、展示資料をガラスケースのなかに収めて、動かないように固定するだけ。しかし民博ではまったく異なる展示システムを開発する必要があった。
「専門の展示業者さんが集まって、いろんなアイディアを出してね。格子状の金属壁に金具や天糸(てぐす)を使って展示物を固定する案に落ち着きました。グラグラせんように固定せんとあかんから、このシステムはだいぶ精密につくられています」
民博の本館展示場は全体に黒い壁で統一されている。その壁に、所狭しと並ぶ仮面などは、まるで宙に浮いているようでかっこいい。久保先生に言われてから、改めて壁の様子をよく見ると、たしかに格子状につくられていることがわかった。
「このシステムでは研究者が自分で設置することはできへんから、必ず展示業者さんに入ってもらわんとダメなんです。だから民博の展示にはお金がかかるんやね」
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