「カネもかかる、技術もいる。でも…」 "超マニアック"博物館《国立民族学博物館》が、貴重な資料の「露出展示」にこだわる"超シンプルな理由"

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たしかに、来た順番にどんどん入れていくほうがわかりやすいし、無駄なスペースも生まれにくい。資料にはそれぞれカードが付いており、番号、名前、収集地、そしてアドレス(どの棚のどの列にあるか)が記載されている。

「あ、このトレイは便利そうですね?」

いろんなラックを眺めていると、紙製のトレイを使って整理してあるラックがあった。トレイのなかには細々とした資料が入れてある。西澤さんが説明してくれる。

「これは収納箱と言います。便利なんですよ。収納箱がない状態ではいろんな資料に触らないと奥にあるものが確認できません。でも収納箱があれば、箱ごと取り出して目的の資料を確認できます。奥のほうまで収納できますし」

よく見ると収納箱は手づくりのように見える。収納箱を引っ張り出すための紐の付けかたにどことなくお手製感が漂っている。

「職員がつくったんですよ。収納箱に穴を開けて紐を通しました。接着剤は使わずにつくっています。接着剤は劣化するし可塑剤を使っているので、それがものに影響を与えてしまうこともあるんです」

すごい。西澤さん、まさに資料整理の鬼だ。

「ではものすごく小さなものはどうするんですか? なくしそうなものもありますよね?袋に入れてから収納箱にしまうとか?」

「釣り針とか、そういう細かいものもたくさんあります。まれに袋に入れることもありますが、基本的にはオープンな状態で保存します。袋に入れると湿気がこもってしまいますから。ビーズのように非常に細かい物については小分けにして、一つずつ情報を付けて保存しています」

「盗まれた⁉」こともある

民博の教授で『月刊みんぱく』編集長の樫永真佐夫先生にふと聞く。

「あ、ちなみに、展示資料が盗まれたとか、そういう被害はないんですか?」

「あんまり聞いたことないですねえ。盗むようなものないからちゃうかな。あ、でもそういえば、リニューアルのときにありましたね」

やはり。もちろん展示資料は持ち出せないよう壁にしっかりと固定されている。とはいえ、さすがに無防備すぎる。警備員も少ないし。

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